SF+推理小説的な趣きも?
★★★☆☆
怒涛の感動作“The Pact”に続く、99年発表の第6作。
今回は別れた夫婦が7歳の一人娘のカストディー(養育権)を巡って争うお話なのですが、前半ではその娘が神と会話をし、不死の病を治し、キリストと同じ聖痕(stigmata)から出血まですることから、メディアは勿論宗教界も巻き込んで大騒ぎとなります。“Mercy”以来作者が好んで採り上げる後半の裁判では、娘の超能力は本物なのか、又精神を病んだ母親による虐待なのではないかといったSF+推理小説ばりの興味もそそります。
相変わらずよくもまぁ考えたものだという仕掛けが施されており、ヒューマンだけど相当あざとい(?)作者の面目躍如と言えましょう。が、クライマックスには想像(期待)していた程ショッキングな事実は待ち受けていません。宗教の「重さ」は我々日本人には想像もつかず、ある意味これ以外の結末は難しいのかも知れません。
基本的に現在形、加えて母親だけは一人称で語られており、独特な味わいがあります。巻末にインタビューがついており、本作は作者の実体験と実生活をヒントにしたそうです。常に切れ目なく書き続けており、しかも同時に複数作品に取り組んでいるとの発言が興味深かったです。