著者はMindreading(人の心を知る能力)は人間誰にでも備わっているとしている。だからこそ私達は目の前の事実とは違う冗談や皮肉を理解したり、他者が何も言わなくてもその心理状態を推測したりすることができるのだ。そしてこれが欠けている状態が自閉症・・・著者の言葉で言うのならmindblind・・・であると著者は書いている自閉症が通常の発達とどう違うのかを非常に分かりやすく解説している。子供の意識や発達の段階などもためになり、また思い当たる点も多く興味深い。
人間と高等類人猿の比較では、人間にしかない能力という観点から違いを解説し、進化の違いを論じている。例えば、手話の習得などによって言葉を理解するチンパンジーやゴリラなどはほとんど自分たちの欲求を伝える以外には発話することがないという。人は欲求を伝える以外にも実に様々なことを考え、そしてそれを言葉にして他者に伝えようとする。
私達が他者と意思の疎通をはかれるのも、言語を習得できるのも、まさに自然淘汰と進化の結果であるということがこの本を読むと大変よく理解できる。