内容は濃く重く読みやすい
★★★★★
主人公竜太の青春時代〜憧れていた坂部先生と同じ教師へ。
純真な気持ちで子供達と接していた竜太に次第に暗雲が立ち込める。
昭和初期を時代背景につくり出された人格や思想が分かりやすく描かれています。
登場人物の些細な会話などで教育や人間の在り方などいちいち考えさせられる作品です。
5★目線を合わせて語れる小学校教師
★★★★★
149p★戦時下、思想統制が厳しかったころ、キリスト教を信ずる教師は、
信仰を同僚に問われて、聖書を引用し答えます。
「キリスト教には『汝の敵を愛せ』とある、この博愛の精神は、
どこの国でも同じじゃないか」
(私が信じるキリスト教は非国民といわれる様なものではない)
186p★教師は同じ内容のことを、教え子の小学生にこう伝えます。
「竜太、どうしたらいいか、わからん時は、自分の損になるほうを選べば良い」
「自分が得をするようなことに出会った時は、人間が試される時だ」
「人間は利に目がくらむものだ」
この先生の教えを思い出した少年・竜太は、タコ部屋から逃亡した朝鮮人を助けます。
PS● → 『レ・ミゼラブル』ユゴー
この教師の解釈をみて、初めてジャンバルジャンと銀食器の意味が咀嚼できた。
ジャック・ニクラスと盗難パターの深イイ話をTVで観てこのレビューを書き直した。
簡潔な文章と丁寧なエピソード採用で当時の様子が伝わりやすい
★★★★★
上巻は、昭和元年(主人公、北森竜太、小学校3年生)から昭和16年(竜太、25歳、小学校教師着任後3年位)までを描いている。この巻の主題は、教育勅語暗誦や奉安殿拝礼が教育現場で最も大切なことととして扱われていた時代、子ども、教師を含め人々の思想や言動が著しく統制されていたこと、そのような時代背景にも危険や不利を省みず、己の信念や気持ちに誠実に、自由や敬愛を大切に生きた大人がいたことだと思う。質屋業を営む竜太の父親の見識や度量、坂部先生の生徒に対する仁愛は、まことに感服に値する。「国家総動員法」など現在の生活には馴染みの薄い用語も出てくるが、作者三浦綾子の文章は簡潔で読みやすいし、エピソードも丁寧に描かれていて様子が伝わりやすいので、多くのかたにご一読をお勧めしたい。
戦争を考えた
★★★★★
私はアメリカでずっと育っているので、第二次世界大戦のこともアメリカの学校でならってきてました。だから日本は攻められても仕方ないし、たくさんの人が死んでかわいそうだったかもしれないけど、結局は助けてもらえてよかったねくらいにしか思ってなかったです。でも、中学の時にこの銃口を読んで歴史をもう一度勉強しようと思いました。時代背景、戦争の実態なんかをこの本を通して知りました。徴兵された主人公が同じ日本軍のなかでの争いなどに疑問を感じたりするところも、まったく知らなかったこと。とくに、主人公の先生が印象に残っています。どれだけ生きることの困難な時代だったんだろうとか考えました。私だけでなく、今日本でも歴史を軽く見てる人は多いと思います。そういう人にぜひ読んでほしいです。
戦争の足音が・・・
★★★★☆
戦前の北海道旭川。北森竜太は尊敬できる坂部先生や、温かい両親、姉弟に囲まれ幸せな少年時代を過ごしている。竜太少年がおりおりに感じたこと、経験したことが丁寧に描写されている。時代背景がよくわかり、それと同時に、読者に不安をいだかせるところで下巻へ。話の展開がゆっくりすぎる感もある。初恋のひと芳子との将来はどうなるのか?