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果てない青ざめた空のような

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カテゴリ: Kindle版
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家も、金も、仕事も、友もなく、手首が傷だらけの男。
彼が始めたのは、「傷の上に絵を書く仕事」だった。
痛みも過去も塗りつぶす、その筆先に明日は宿るか?


あらすじ

 阿久田新一(あくたしんいち)二十五歳は、精神疾患で仕事を休み、有り金は風俗で使い果たした。最後の希望をたくすSOSメール。送り先は若者の支援をしている著名人とNPOだ。
一通のメールが来る。メンタルヘルスや引きこもりの取材をするフリーライター・宇賀谷健二(うがやけんじ)が、助けをよこしに来てくれるらしい。
 どん詰まりの地獄から阿久田を救い出したのは、小此木亜美(おこのぎあみ)。彼女は阿久田と同い年の人気ナンバーワン風俗嬢。
 とりあえずの宿を得た阿久田は、一晩宇賀谷と語り明かす。美大を出てからここにいたるまでの人生、心を病んだいきさつ、自分で腕に傷をつける楽しさ。右腕の傷をぬうようにしてマジックインキで描かれた模様を見つけた宇賀谷は、いった。
「金になるぞ、たぶん」
 小此木の知り合いの風俗嬢がリストカットを止められず困っているから、その代わりに腕に絵を描いてほしい、謝礼はきっとはずむだろう。美大卒の阿久田にとって、絵を描くことは唯一の得意分野だった。半信半疑のまま阿久田は首を縦に振る。
 初仕事の日の娘はとびきりの美人。傷を見、彼女の告白を聞き、祈るような気持ちになって彼女の身体にマジックを走らせる。
 小此木はセンチメンタルになる阿久田に優しさを見せる。
「あたし明日仕事ないからさ、今晩どっかで一緒に寝ない?」
しかし上手くいかない。阿久田はわけのわからない不能に見舞われて呆然とする。
 宇賀谷の部屋に帰り、相談を持ちかける。自傷行為者の傷痕に絵を描くセラピーをビジネスにできないか?
 その後、男子校生やガンで死にかけている母親など、セラピー教室は次第にリピーターを増していく。やがてその母親の死化粧を任されるアクタ。
 ある日、同業者に近い男と出会う。
「俺たちは絵を描きながら、探してるんだ。魂を癒す何かをさ。たとえ誰かを傷つけても、それを止めることはできないんだ、君もそうなんだろ?」
 その後、小此木はかれを励まし、時にはなじってペンを取らせる。彼女の傷に色をつける阿久田。小此木にあの晩の不能について「ある告白」をする…