認識が変われば世界が変わる
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三島由紀夫の作品の中では軽い物語ですが、お嬢さんのかすみの心理、認識の変化で世界が疑りの種に満ちてゆく描き方はさすがの鮮やかさで引き込まれてしまいました。 あらぬ嫉妬に苦しみ内向するかすみを救ったのが皮肉にも、かすみが一番見下げていた人物だったというアイロニカルなオチが、さりげなくあるところも、さすが三島です。
三島の美文調に酔う
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はなしのすじ的には、そこらへんの道端に落ちている石並みの平凡ないわゆるエンターテインメントなのだが、それが三島の美文調に乗っかるとこうまで華やかになるものか。
とにかくはなしのすじ云々ではなく、とぎれなく繰り出される絶妙な独特の表現が楽しい。純文学系の作品になるとそれが「くどく」なりすぎて時に悪酔いしてしまうのだが、この作品は適度にワイン程度のアルコール度で気持ちよく酔えます。
電車で読んでいたのですが、あまりの文章のノリに目的地に着いても、読むのを止められなくなり、真夏の太陽が照り返す駅のホームのベンチでそのまま耽読してしまいました。
縺れた糸は最後に解ける
★★★★★
主人公は「かすみ」という二十歳のお嬢さん女子大生。
序盤はゆっくりとした男女の駆け引き。
中盤から男女の駆け引きが一気に加速。
終盤は「かすみ」の暴走と停止。
三島は天才だと再確認。
色彩豊かで繊細な心情・情景描写は
三島らしい美しさ。
潮騒とはまた違う男女の純愛。
女同士の友情。
傷付いた女同士のみが分かりあえること。
初文庫化をキッカケに
この作品を初めて読んだが
『三島は金閣寺で挫折したけど、この作品は一気に読めた。こんな昼ドラみたいな話を本当に三島が書いたの?』
「かすみ」が現代の女子大生ならそんな事を疑惑日記に書いていたかもしれない。
三島デビューしたい「かすみ」と同世代女性に特にオススメ。
春の雪で挫折した人、そして恋愛で悩んでいる人にも。
必ず最後まで読み切れる。
読了後の余韻に浸れ。