イギリスで出版された原書の翻訳である本書の最大の特色は,いかにも欧米らしい実践的アプローチに基づいている点である。『ヒエログリフ入門』,『やさしいヒエログリフ講座』では,基本的に文法学に沿ったオーソドックスな順序(名詞・形容詞・人称代名詞・動詞・文型・・・)で解説が進められるが,本書では,大英博物館所蔵品に記されているヒエログリフの解読を課題に学習を進めるので,初めから達成感があり,興味を持続させやすい。もちろん必要十分な文法事項・語彙についてもその都度解説されているので,1冊を読了した際の達成点が前二者に比して劣っているということはない。
これまでヒエログリフの学習に挫折したことがある方にも,是非一読をお薦めしたい。おそらく,本書を読了したのちに,『ヒエログリフ入門』ないしは『やさしいヒエログリフ講座』に取り組めば,知識の整理にも役立ち,より力をつけることができるのではないだろうか。