本書では、顧客価値提案に4つのカテゴリ(「ベスト・トータルコスト」、「プロダクトリーダーシップ」、「コンプリート・カスタマーソリューション」、「システム・ロックイン」)を設けて、カテゴリ毎にどの様な内部プロセスで卓越すればよいか、またその様な内部プロセスを構築・持続するにはどの様な組織の「無形資産」が必要なのか、をわかり易く整然と解説しています。この因果連鎖を明確化・可視化するところが、「戦略マップ」の最も本質的なところだと以前から言われていました。この観点から、前著と比べて本書が優れている点は、内部、即ちビジネスシステムの構成要素としての「内部プロセス」と学習・成長の視点から見た「組織の無形資産」、の関連が非常に明快かつ詳しく述べられている事、及び価値提案のカテゴリ毎の「戦略マップ・テンプレート」が提示されている事、にあるのではないかと思っています。
私は、ITが(製造業の)ビジネスシステム、ひいては経営戦略にもたらす価値をうまく説明できるロジック(論理)に、非常に興味を持っています。この観点から、本書とともに伊丹教授の名著:「経営戦略の論理(第3版)」が、私のような戦略論の初心者にもわかり易く、断然オススメです。そこには、見えざる資産としての「情報資本」に関する卓越した知見が述べられています。
本書では戦略マップの成り立ちを解説することで、全ての経営活動が有機的に繋がっていることを平易な英語と豊富な図版で巧まずして語っており、英語が得意でなくてもとても判りやすく読むことが出来ました。
もちろん経営の現実はそんなに単純ではないのですが、BSCファンでなくても、単純化・図式化して考えることの大切さと多くの示唆を得ることが出来ると思います。邦訳の出る前に是非手にしておきたい1冊。