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神の火を制御せよ 原爆をつくった人びと

価格: ¥2,415
カテゴリ: 単行本
ブランド: 径書房
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「大地」ではなく、今こそこの一冊を読むべき ★★★★☆
 なぜ原爆投下を阻止できなかったのか。研究開発に関わった実在の人物をモデルに、当時の科学者たちの葛藤を描いた小説。
 50年前に出版されながら今なお再読(とりわけ日本人にとって)に耐えうるのは、著者であるパール・バックが多様な視点を持つからだ。幼いころに中国で暮らした経験を持つ著者は弱者、少数者の立場から物事を見つめることができるのだろう。登場人物の中で、著者の分身を思わせる女性科学者にこう語らせている。「体と頭脳のすべてをかけて、わたしたちがつくってしまったあの物に反対して、闘って責任を取りたい」。ちなみに彼女はインド育ちの設定となっている。
 帯には「欧米でベストセラーになった本書は、なぜ日本で出版されなかったのか」とあるように、本書の出版は07年。訳者はその理由をあとがきで明記していないが、国民感情を配慮してのことだろう。代表作「大地」で知られる著者だが、「核なき世界」を説く大統領が誕生した今こそ、中高生にはこの一冊を読んでほしい。
フィクションだが感情移入できない ★★★☆☆
 テーマとしては、やはり当時の科学者やその家族がどの様に原爆の製造を
感じていたのか、なぜ進めてしまったのか? なのだと思って(思い込んで?)
いたのでそこを読み取りたかったのですが、それを表現するはずの(架空の)
登場人物の感情の掘り下げが浅く、淡々とほとんど悩まずに突き進んで
しまったように感じ取れました。
 また、実験に成功してから実際に使用されるまでを書いたページ数が少なく、
本来であればそこで反対運動や科学者の葛藤、悩みが強く表現できたはず
なのに敢えてしていないようにも思えます。
 時代として反対を強く表現できなかったのか、実際に反対は少数派だった
のか、作者が最初から書くつもりのがなかったのか。私自身の作者や史実
に対する勉強不足もあっての感想かもしれないので、今度は純粋なノンフィク
ションを読んでみます。
 ただし、その中でも女性の描き方は、流石に女性だけあってとてもうまいと
感じました。仕事のために恋愛や結婚生活に悩みを持つ男性にはお勧めかも。
真面目で良心的だが、小説としては物足りない ★★★★☆
原爆の開発・製造に携わった、アメリカの科学者たちの愛と葛藤を描いた小説。1959年に書かれた古い小説だが、原爆開発というデリケートなテーマが忌避されてか、日本ではつい最近まで訳されなかった事でも話題になっている。

ものすごく重厚な小説だろうと、覚悟を決めて読んだ。ところが、意外に軽くて読みやすかった。軽すぎて物足りない気すらした。内容がいいかげんなのではない。原爆投下が戦争を終結させたという、アメリカ人の一般的な考え方を紹介する一方で、原爆による惨禍についても触れて、原爆の開発・使用に疑問を投げかけている、極めて真面目で良心的な内容である。だが、ストーリーにコクがなく、登場人物にも精彩がなく、物語としての面白味に欠けるのだ。

たとえば、原爆の開発に手を染める事になった科学者たちの心情が、種々つづられている。ナチスが原爆を開発しており、先を越されたら一巻の終わりだ。自分がやらなくても、他の誰かが開発するだろう。自分が開発に積極的に参加する事により、使用を止められるかもしれない…等々。ノンフィクションなら、事情がよくわかって興味深いというだけでも充分だろう。だが小説では、それ以上のものがほしい。何というか、頭で理解させるだけでなく、感情に訴えるもの、ドキドキさせられるものががほしいのだ。本書には、そのような小説としての面白さが感じられなかった。一方、ノンフィクション・ノベルと見るには、ノンフィクションの部分が曖昧すぎて、やはり物足りない。

以上、小説としては中途半端で、かなり物足りなかった。だが、1959年という比較的早い時期に、アメリカ人の著者が原爆に関してこれほど真面目で良心的な小説を書いた事は、高く評価すべきだろう。星はおまけの4個。
SFやファンタジーが好きな人にもぜひ。 ★★★★★
書かれたのは随分昔ですが、内容は全く古臭さがありませんでした。
ノーベル賞学者の本とあって、難しいかと思いましたが非常に判りやすく、誰にもお勧めできる本だと思います。
(北朝鮮の原子炉が何であんなに騒がれているのかも、恥ずかしながら私は初めて理解できました(笑)。原爆には原子炉が要るんですね)
パンドラの箱 ★★★★★
 ノーベル賞作家パール・バックの幻の小説ついに刊行! 欧米でベストセラーになった本書は、なぜ日本で出版されなかったのか。 被爆国に生きる我々は、この小説をどう読むのか! という本書の帯にひかれて購読してみた。特に最後の「この小説をどう読むのか」の一言は挑戦状を突きつけられているようで、スリリングである。
 物語は第2次大戦下、アメリカで原爆開発の「マンハッタン計画」に携わった科学者達の開発苦労と使用後の惨状をめぐる葛藤を描いたものである。いずれも当時実在したと思われる人物をモデルにしているが、その中でただ一人女性の科学者(架空の人物?)を登場させ、彼女に「原爆は使用させてはならない」と語らせている。これこそが作者の分身であり、本書の骨格を示すものである。今でこそ当たり前の主張であるが、本書が書かれた1959年、冷戦当時の世界情勢を考え、さらに開発国側の人の発言であることを考えれば、将来を見据えた識見であることが十分に判る。物語の前半は、原子物理学の専門用語や、男女間の恋愛感情などやや冗漫とも言える描写が続くが、後半はいよいよ広島・長崎にどのようなプロセスを経て投下されることになるのかという、すでに読者も熟知している史実への解明期待もあって、緊張感と共に一気に読ませてくれる。
 読後感としては、ドイツが降伏したとき原爆開発は失敗していたことが判ったから、その時点でアメリカも開発を中止してもよかったのではないかとか、あのとき主人公が中止していればとかいう「もしも」話を打ち消すことが出来ない。しかし、人類は「パンドラの箱」を開けてしまった。「神の火を〜」という題名も思索的である。一方、巻末で原子力の平和利用のことが少し暗示されるが、現今「原子力発電所」はいろいろな問題をはらみながらも、今やその廃止はあり得ないことを考えると、自分にとって「この小説はどう読んだのか」結論は堂々めぐりをするばかりである。いずれにしても一読の価値に値する書であることはまちがいない。
 パール・バックといえば『大地』があまりにも有名だが、これだけではない「社会派作家」として「差別の撤廃」や「福祉活動」ときには政治的発言や行動をしており、もっと評価されてもよい作家である。