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トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)

価格: ¥662
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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   対応する原書が存在しない、貴重なポール・オースター・エッセイ集。 日本で出版される本書のために、オースター自らが目次を組んだという。邦訳はもちろん、「翻訳の神様」柴田元幸。まさに著者と訳者の信頼関係が実現せしめた、無二の特別編集。

   世界の悲惨に対する悲しみやニューヨークへの愛をバックグラウンドにつづった「あの事件」以降の作品から、長編エッセイ「その日暮らし」まで。幾度も幾度も読み返したい魅力的な作品の数々を、オースターの声をそのまま響かせ得た「原文と等価」のすばらしい訳文で、ゆっくりと堪能したい。

Daydream Believer達へ。 ★★★★☆
 このエッセイ集は、「空腹の技法」同様、オースター作品を語る上で外せない作家修行中の苦難の日々、奇跡みたいな実話エピソードが満載である。最後の方に集められたラシュディ論や9.11論なども彼の温かなヒューマニズムが感じられる小品だ。「空腹の技法」と較べるなら、文学論や詩論・芸術論はあっちの方が充実しており、バイオグラフィーや軽めのエッセイはこちらの方が読みやすい。

 彼はしばしば、いつか作家になる自分を信じてドン・キホーテのような貧乏生活を送っていたありし日の自分のエピソードを客観的にユーモアを交えて語っているが、それは全ての若き作家/詩人の卵たちへのメッセージなのだと思う。「勤め人」以外の働き方を行うことが難しい今の時代で、こういったメッセージは芸術家に限らず夢を追って頑張っている人々の胸を打つだろう。
鉛筆を持っていなかった少年 ★★★★☆
翻訳者の柴田元幸によれば、この本に対応する原書は存在せず、オースターが日本で出版されるエッセイ集のために、みずから目次を組んだのだという。
奇跡のような偶然の一致をあつめた「赤いノートブック」。オースターが小説を書くようになるまでの日々をつづった「なぜ書くか」「その日暮らし」などが収められている。

「昔からずっと、私の夢は唯一、ものを書くことだった」というポール・オースター。
そのために、長く辛い道を歩く覚悟をきめて、作家が旅した道のり、ジェットコースターのような日々。
読みながら、ああ、オースターにしてこれほどの時間がかかったのだ、と思う。
日々の糧を得るために駆けずり回り、「聖書的な次元の」不運をくぐり抜けて、「自分がなしとげうると思える仕事をなしとげる機会」にたどり着いたのだ。

 *

本書の中に、とても好きな逸話がある。
幼い日のポール・オースターが、大リーガーのウィリー・メイズに出会う。
サインをもらおうと鉛筆を探すが、ポール少年はもちろん、周りの誰も鉛筆を持っていない。
そのために、ポール少年は大好きな野球選手のサインをもらうことができなかった。

このエピソードが、どんな道すじをたどって未来の作家、ポール・オースターにつながってゆくのか、興味をお持ちのかたは、ぜひ本書をひもといてみてください。
きっと、ページをひらいたまま「にやり」と笑わずにいられないはず。
偶然と記憶 ★★★★★
「デジタル時計が11:11となる瞬間を見た。すげぇ偶然。」とか言う人がいるが、それ以外の時刻になる瞬間も記憶していないだけで何度となく見ているはずだから、奇妙な偶然として記憶に残るかどうかはその人の価値基準に負うところもあるのだろう。
本書を「嘘のような本当の話」として楽しみつつ、オースターがどういった事柄を強く記憶し物語としてどう受け止める作家なのか考えながら読んだ。今度オースターの小説を読む時に本人の顔が浮かんできそうだけれど、きっと読み始めたら物語にどっぷりはまって、彼のその日暮しのことなんて忘れてしまうに違いない。
偶然を愛する ★★★★★
「これは実際にあった出来事である。
 この赤いノートブックに書きつけたほかのすべての物語と同じく、本当の話である」(本文より)

まるで冗談のような本当のことに、しょっちゅう著者は出会うらしい。
日々の生活から「事実は小説より奇なり」を肌で感じ取っていたのだろう。

そうした偶然を、ミステリのように科学的に説明しようとするでもなく、超常現象として語るでもない。
「こんなおもしろいこともあるんですよ、不思議ですよね人生って」というように、そうした偶然を楽しんで愛するその姿勢が好ましい。

日々の生活も、物語の中。
なるほど、作家はこういう風に世界を見ることができる人種のことをさすのかもしれない。
事実は確かに小説より奇なり ★★★★★
本書を紹介する際に「事実は小説よりも奇なり」と言う言葉は鬱陶しいくらい使われているため、本書を読む以前はその、使い古された、普通はほとんど通用しない言い回しに多少の嫌悪感を覚えていた。しかし、読んでみるとこの言葉は明らかにポール・オースターの人生の中枢をなしていることがわかる。誇張では決してない。ドキッとする話、ハッとする話、ホワンとする話、ゾクッとする話。何でもありだ。それらの話がポール・オースターの、シンプルだが気の利いた繊細な言い回しで彩られる。

ポール・オースター自身が体験した話、友人から聞いた話、ファンから聞いた話からなるショートストーリーズの章も読んでいて勿論楽しいが、彼が作家として売れるようになるまでのエッセイ的な「その日暮らし」(原題「Hand to Mouth」)も作家ポール・オースターを知る上で非常に興味深い。彼が奇妙な、凄まじい人生を生きてきたことが分かる。