若者の願いと若者への願い
★★★★☆
この著書は「若者と労働」に関する書籍の中でも、若者の立場から提言されているところが大きな特徴だとおもう。
一歩間違えれば「自己責任」として自分ではどうしようもない労働の世界、やさぐれた環境に身を置かなくてはいけない
昨今の若者事情。また「最近の若者は・・・」論、これらに「ちょっとまて」と、研究者の立場から冷静に分析し、
若年者が置かれている状況をとても丁寧に社会へ向けて論じている。
この本を読んでわかることが、今若者がおかれている厳しい状況は、実は昨日今日始まったものではなく、
戦前からゆっくりと時間をかけて社会的な(企業的な)領域によって構築されたこと、
かといって、それを「大人達」の責任だけにせずに、若年者へ「強い個人」として成長を期待し、教育的領域にも提言をしている。
社会学者なので、「若者の味方」的問題意識の若干の偏りは否めない。けれでも慎重なデータ、文献の選択は十分に客観性をもって説明されている。
「学校経由の就職」の問題点は暴き出しているが、問題もある
★★★☆☆
この本の長所
今まで自明の理だと思っていた日本流「学校経由の就職」の問題点を暴きだしているところ。私が読んだ限りでは、(ア)個人の意志より学校の都合が優先されていること、(イ)「教育の職業的意義」が問われず、その結果企業において再教育が必要になったり、職業生活がうまくいかなかったりという不都合が生じていること、の2点が明らかになった点が大きい。
この本の短所
1、フリーター分析(第4章)。法律問題・労働問題のはずなのに(企業が非正規の条件を出していることが最大の問題点のはずなのに)、無理に教育や家庭の問題にしてしまっているきらいがある。調査をする前に、憲法(特に22条1項、27条1項)、民法、労働法の勉強をして欲しいものだ。
2、提言。(ア)絶対主義・習得主義にすると年齢を重視する日本において就職できない人間が増えてしまうのではないか(年齢差別を撤廃すべきなのだが、それをするとやはり若年層に不利になると思う(経験が違うから))。(イ)すべての高校を基礎専門に特化しても、その結果輩出された人材が企業に吸収されるか未知数だし、「自分は何者か」を定義することが行き過ぎてフリーターになる事例もあるので、逆効果になる可能性もあるのではないか。
結論
長所星5つ、短所星2つ、短所2、を重視して、星3つ。
なかなか専門的
★★★★☆
タイトルと表紙は割りとポップだが、
中身はかなりカタイ専門的内容。
その意味ではターゲットが曖昧だが、
ニート・フリーター論にとどまらず
広く日本の若者の雇用へのトランジションを
従来の学校経由就職に注目して論じている。