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丸山眞男を読みなおす (講談社選書メチエ)

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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丸山を日本の近代思想史のなかで稀有な存在にしているもの ★★★★★
本書の結論で、著者は「丸山を日本の近代思想史のなかで稀有な存在にしている」のは、「主体性というものを…突き詰めて問題にし」「主体性を超えたものとの関わりによってしか主体性は生まれないという考えに至ったこと」であるいう。

「はしがき」で著者は、政治学や政治時評の仕事を《夜店》とし、日本の政治思想史の研究こそが《本店》と述べる丸山が、《本店》で追及したもの、それは「規範意識をもった強い主体性の樹立につながるような思想の萌芽を、この国の思想史のなかに探りだすとういうこと」に他ならない、と述べる。

しかし、「そうした主体性という考え方は、しばしば西洋の近代的自我というものと同一視され、そうしたものが定着したこともないこの国においても、もはや過去の遺物でもあるかのように」みなされ批判の対象とされてきた。

さらには、「丸山の主体性論は西洋近代をモデルにしているのではないか」「日本文化を一元的に捉え、それを西洋中心主義のまなざしで批判したのではないか」「(丸山という思想家は)近代の国民国家の枠組から抜け出せなかったのではないか」という誤解も受けてきた。

著者は、そのような丸山をめぐる状況のなかで「その主体性の思想の実相に迫るには、そうした誤解をふりほどいていかなければならない」と述べ、「丸山の著作を性急に概括し裁断する」のではなく「丸山の著作との静かな『対話』を通して」明らかにしたい旨を記す。そして、そのようにして丸山のなかに「強靭でしなやかな主体性が生成していくプロセスを読み取ることができればと願っている」と、「はしがき」を結ぶ。

読者は、本書をとおし「稀有な思想家」におけるその生成のプロセスに参加し、丸山《本店》の醍醐味をあじわい知ることができる。
丸山眞男を読むための最新の航海図 ★★★★★
丸山眞男を大して読んではいない評者ではあるが、日本のアカデミズム史において丸山が重要な人物であることには特に異存はない。ただ、その丸山眞男が何を考え、どのような問題に取り組んでいたのか。その全体像を把握することは存外に難しい。

それは、丸山と同時代を生きた1920-1930年代生まれを中心とする世代によるヒステリックな非難やそれとペアを組む思い入れ過剰な擁護論、あるいはまたポストモダンやポストコロニアルを標榜した軽薄な批判の狭間に、丸山のそもそもの問題意識が埋もれてしまったということの反映であるかも知れない。また別の要因として、本書の検討の中心に位置する『丸山眞男講義録』全7冊が1990年代後半に出版されたことによって、丸山を論じる条件がそれまでとは激変したことも挙げられるだろう。

それらを前提とした上で、1952年生まれの著者の手になる本書を読んでみれば、この本が2000年代に進められた新たな丸山研究の成果の一つとして、現時点で明らかにできる限りでの「丸山眞男の日本政治思想史研究の全体像」を提示しようとしていることが見えてくる。これは、それ以前の研究からは得られないものであり、今後、丸山眞男について何かを考えようとするときに、よい手引きとなりうる一冊であると思う。

丸山眞男の息子世代にあたる研究者によるこうした研究成果を引き継いで、いずれ登場しだすであろう孫世代(1970年代生まれ以降?)による丸山研究がどのように展開していくか。本書を読んでいると、そうした点にも興味が向く。
丸山眞男・ダイジェスト ★★★☆☆
 本書は丸山眞男の膨大なテクストを、テーマ別に纏めており、丸山の考えを手軽に知りたいという人にはお勧め出来る。しかし、丸山を論じるにあたっての、新しい観点や、斬新な切り口などは期待しない方がよいだろう。ただ著者は日本の近代哲学に詳しく、丸山の思想を西田幾多郎、和辻哲郎のそれと関連付けて論じている点は興味深いが、それが通り一遍の言及に留まっているのは惜しまれる。
 本書を一読したときの印象は「よく勉強しました」の一言に尽きる。