仏陀の法を正しく伝えている
★★★★★
この本は六波羅蜜ではなく十波羅密を止揚しています。(目次を見ただけでは六波羅蜜しか書いていないと思われるかもしれません。しかし19章地の設定には明らかに十波羅密を強調しています。)そして訳者による詳細な訳注があることで、チベット仏教内における問題点を明確化していて、しかも正統仏教の行のあるべき姿を適切に伝える貴重な一書であるといえるでしょう。問題点は是正されれば良いだけです。
特に、素晴らしいといえるのは、「方便は彼の教誡」の部分に該当する4章から19章の部分にあるでしょう。
菩提心を誓願と発趣として願うだけの誓願でなく発趣の実践的項目を明確に述べている点がなんといっても仏陀の境地へ近づくに不可欠な菩提心と実践として挙げられていることによりこの古典の的確性が表れているでしょう。
懐かしい先生
★★★★★
ツルティム先生は、私が昔チベット語を教えていただいた先生です。
Gampopaの翻訳を読ませていただいて、本当に懐かしく、当時のことが思い出されました。
先生は丁寧に文法の基礎を教えてくださいました。
とても楽しく、また学問に対する貴重な示唆も与えてくださいました。
先生の訳文はとても心のこもった、暖かい文章です。
読んでいると、チベットの聖人の言葉そのものです。
日本語として理解に苦しむ部分は、チベット語の知識があれば、理解できます。
直訳なので、考えながら読むことをお勧めします。
これはどういう意味か?ということを考えながら読み進めると、
よく覚えられます。
釈尊の仏道に外道を混ぜたら仏道は消える
★★★☆☆
序論の第5節に『解脱荘厳』の構成が簡潔に述べられている。これによれば、主要部分は「方便は彼の教戒(第4〜19章)」→「正覚へ発心する諸法(第8〜19章)」→「発心してからの学処(第10〜19章)」→「発趣の発菩提心の学処(第11〜19章)」と展開される。膨大な記述であるが、「六波羅蜜」で終わるので典型的な大乗仏教である。
しかし、根源的なエネルギーを解放するために男女の性的ヨーガを教え、成就の一つとして呪殺をも行う「秘密真言」と、出家僧侶の生活規範として性的活動を禁止し、殺生を許さない「律」との相克問題がチベット仏教の矛盾として立ちはだかることを正面から見据えたのが、ガンポパの良心であったように思われる。
“無理が通れば道理が引っ込む”、あるいは“朱に交われば赤くなる”と言うように、釈尊直説の仏教に土着信仰の反仏教を混合すれば、仏教は消えてしまう。しかも、釈尊仏教は「律」である前に「経(阿含経)」であるが、それは大乗仏教となる過程ですでに失われている。歴史の歯車を混濁が生じる前に戻さないと釈尊仏教は消滅する。