アジアの言語事情から、英語を"world Englishes"の観点で捉える
★★★★☆
本書は、アジアの英語使用実態、英語使用頻度、英語教育の現状等を
概観し、アジアにおいては特に、英語は「コミュニケーションの手段」
としての役割が大きいことを主張する。そして、英米の規範に過度に
拘泥することなく、いわゆる"world Englishes"としての英語を日本人
も意識する必要があることを説いた本である。
著者のその主張の背後には、英語はすでに国際化しており、「国際化す
れば、多様化していく」という観念がある。アジア各国は、それぞれの
アイデンティティーが滲み出た英語を堂々と使っている現実があり、
アメリカの後を追いかけてきた日本だが、今後は日本式の英語で堂々と
ツールとして英語を使っていくべきだ、と述べる。
むろん、最初から「ニホン英語」を教えよ、という主張ではなく、英米
の変種をモデルとすべきだが、結果として会得した「ニホン英語」なら
堂々と使うべきである、という主張である。
著者の主張は、分かりやすくストレートである。文も分かりやすく読み
やすい。"world Englishes"という概念を考える材料になる本である。
また、アジア各国の英語の特色や、英語教育の現状も比較的細かく紹介
されているので、こういった点に興味がある方も興味深く読めるだろう。