小泉首相が田中眞紀子外相にすすめた話題の書。江戸時代の藩士たちに多大な影響を与えた佐藤一斎の「重職心得箇条」に現代語訳を付し、人物学の権威として知られる安岡正篤が解説を施している。
「重職心得箇条」の文字どおり、重職の心得を全17条、旧仮名遣いで掲載し、解説を付けている。文語と口語の対訳は巻末にまとめて掲載しているので、もともとの「重職心得箇条」の趣を味わいたい人は巻末を参照するとよいだろう。本書で紹介されている全17条のタイトルは、以下のとおり。
- 「人物」の条件
- 大臣の心得
- 時世につれて動かすべきを動かす
- 「きまり」にこだわらない
- 機に応ずるということ
- 「公平」を保つ
- 知識・見識・胆識
- 「世話敷と云わぬが能きなり」
- 形賞与奪の権
- 何を先に成し、何を後に成すか
- 包容の心
- 私心・私欲があってはならない
- 抑揚の勢
- 手数を省く事肝要
- 風儀は上より起る
- 機事は密なるべけれども……
- 「人君の初政は、年に春のある如きものなり」
いずれもシンプルだが、重職に携わる人間に求められる資質や心構えを見事に表している。何度も繰り返し読むことによって、解釈も深まってくることだろう。人の上に立とうとする志のある人は、重宝すること間違いなしである。(土井英司)