WTOは、何らの民主的手続きによらず選ばれた官僚らによって方針が決定され、巧妙に「南」の国々を運営・交渉の蚊帳の外に置き、いわゆる多国籍企業の利益を最優先する仕組みを作り上げている。WTOルールは報復的な関税による罰金徴収という形で強い拘束力を持つ一方で、どんな国際法にも従属せず、環境や安全に関する国際条約や、各国の法律や地方条例にも従う必要がない。貿易にとって障壁になるとみなされれば、環境保護政策も、国民の安全や労働者の権利を守る政策も、提訴される制裁を受ける可能性がある。環境や労働条件に配慮した製品もそうでない製品も同等に扱わねばならないし、様々な安全基準は最低レベルへと引き下げられるのが常だ。水道や教育・保健といった生存に不可欠な公的領域までも国際市場に繰り込みむことは、金のある者だけが選択の権利を持つことであり、未来への選択から政治性を排除する。
貿易の自由化・民営化という曖昧な表現で押し進められているのは、実際にはジュネーブの密室で巨大企業の利益のために作られた路線であり、あらゆるものの"商品化"であって、人々を泥沼の競争に放り込む資本の怪物だ。それは私たちが望む未来の姿なのか……?
広く庶民に開かれた書物というより、多少勉強したあとに読む方が良いように思います。この分野に特に興味があるというのであれば、値段も手ごろなので購入し、参考文献等でより深めるという手順をとってもいいかもしれません。(私はそのようにしました)