心の闇に潜む物語
★★★★★
精神科の診断室にはそれこそいろいろな病例の人が来る。この本にも、7名の病例が紹介されている。それどれが特徴のある症状で、こんなことを本気(もちろん病気だからだろうが)で信じ込んでいるのだろうかと思うような例ばかりだ。
まず、題名にもなっている顔をなくした女が最初に紹介されている。顔がちゃんとあるのに「ない」と言う。誰が見ても顔はある。しかし、患者には顔が見えない。(というより見たくないのかも知れない。)
それにしても、あまりにも奇妙奇天烈な話なので精神病院をたらい回しされて大平先生にたどりついたのだ。さすがの大平先生も、それまで顔を覆っていた女性が両手を降ろした時は、何が出現するのかと怪しい胸騒ぎを感じた。
私は、大平先生は間違いなく優しいと思う。大平先生の書いた本にはにじんでいる。だから、今回もその顔のない女性の話を根気よく聞く。その内に、その女性が顔を無くしていく経過があきらかになっていくのだが---。
いやー、この本を読むと、人はとんでもないと思うよな方法でもその辛さから逃避するということがよくわかった。
精神病理に関心がある人に推薦する1冊です。
百人百様
★★★★★
すべての事例を挙げつくしたら、共通するものって見えてくるんでしょうか?
見えてきたものは、使えるのでしょうか?
ここに 人の『こころ』のむずかしさを感じます。
どなたかの本で、『客観的な事実をいくら積み上げても、個人の主観は説明できない』、というのがありました。
このとおりだと思います。
この本でも タイトルの事例を初め、いろいろな事例を挙げていますが…
やはり それぞれのケースでそれぞれの対応の仕方があって、これはもう知識の世界でなく(知識は必要ですが)、
治療者の人間性をひっくるめた勘と経験の世界ですね。
こーゆー世界もあるんだ…と軽く読める本でもありますが、
このようなアプローチもあるのだ…とじっくり腰をすえて読める本でもあります。...これは読み手が決めたらいいことです。
臨場感あふれる一冊
★★★★★
「やさしさの精神病理」から大平先生の著書を愛読しており、
本書も、読みたかったのですが中々手がでなかったのが、
手軽に読めるサイズになったので読んでみました。
本書にあらわれるエピソードは、どれも教務深いもの
ばかりなのですが、本書の面白さは、それに加えて
大平先生の医師としての経験、心構え、これからの患者との
付き合い方の方針の悩み、といった部分が臨場感を
与えてくれている、ということに負うところが大きいと思います。
言い換えれば「生身の大平先生」の臨場感が感じられる、
ということでしょうか。
心理読み物ファンの皆様に、お薦めです。
心の病はみんなある
★★★★☆
登場人物は何人かの患者さんと大平さん。
なんか多重人格本とか、精神病の人の小説とかを
何冊も読んでいるけど、一番人間味を感じた本かな。
人間の言葉や態度の中の裏を理解できるかもしれない。
人間てみんな病気なんだっていうのを感じた。
本人が気づいていなくて話す事の中には
病んでいる原因が何か絡まっているのかもしれない。
みんな何かしら、話ながら、行動しながら
出口を探してさまよっている所がある。
言葉は心の扉の鍵なのかも。
精神病というものを身近に感じられました。