ちなみに、『パパ・ヘミングウェイ』と『うたかたのオペラ』のこの
改変は、起源を辿ればワーナー時代に出されたアナログのベスト盤『BA
RAMERICAN』に遡る。このレコードが企画された時“デジタル・リミッ
クス・リマスター”(レコード帯より)が施されたのだが、その結果生
まれたのがこのテイクなのだった。以降このミックスが“オリジナル”
としてアルバムに収められるようになる。CBS時代のベスト盤CD『Le Ba
r Tango』にも、東芝時代のCDにも、今回のリリースにも使われている。
つまり、初代アナログ音源は一度もCD化されていないのだ。元々を知る
ファンからすれば、欠陥品と言ってもいいようなミックスなのだが、原
盤権を加藤和彦自身が持っていて、今回自身でリマスターしていること
を考えると、これが加藤の意向であると理解せざるを得ない。
先日、初代のマスターのありかについて担当者に電話で訊ねてみたの
だが、その所在は現存するのかどうかを含めて、ようとして知れないと
言う。初代のマスターはワーナーの倉庫に眠っているのか、加藤邸にあ
るのか、あるいは紛失してしまったのか……真相は闇の中である。