まちがいなく良書
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著者は大手取次会社幹部から研究者に転じた人物。
本書の新しさは、これまで単線的に捉えられていた「著者→出版社→取次→書店」という出版流通を、「メディア」としてとらえ直したことだ。たしかに言われてみれば、本屋さんの書棚や平台は「メディア」であり、この本を読むことで、これまで見慣れていた景色も違って見えてくるだろう。
出版不況をめぐっては、「出口が見えない」といった語り口の、どちらかというと似たり寄ったりの本にお目にかかる。えげつないタイトルの本ほど手に取られやすいのだろう。本書は決して人目を引きやすいタイトルではないが、業界関係者にとどまらず、マスメディアに関心のあるすべての人にとって良書となるはずだ。
この本は凄い!
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まず本のタイトルを『棚と平台』にした処が凄い 『だれが「本」を殺したか』等に代表され うんざりする程繰り返される【出版危機言説】の不毛で不愉快な 文化的意義と経済効率と云う二項対立を排し 世界に類の無い 広く重層的な日本の〈近代出版流通〉をその起源から明らかにした画期的な本。 日本独自の書店と云う〈購書空間〉それを可能成らしめた取次と云う出版流通システムをここまで論究できた本は皆無です 多分これは 著者の取次勤務体験 その文化と経済のニ律背反を じかに感じた者にしか成し得なかった 優れて貴重な論考だと思います 今後この本を踏まえる事無く現代出版流通を論ずる事は不可能でしょう 【あとがき】が又素晴らしい かって(四十年に渡り)ただ愚直にひたすらに「棚と平台」に心血をそそいできた一書店員としてここに記します 江口淳(元芳林堂書店)