聖なる王権ブルボン家 (講談社選書メチエ)
価格: ¥1,368
ブルボン家は、16世紀末から18世紀までのフランスを支配した王権である。王権としての歴史は内戦の時代のアンリ4世に始まり、断頭台の露と消えたルイ16世によって終わる。ルイ16世の弟たちがナポレオン1世の時代の後に王位に就いてはいるが、それはそれまでの王朝とは一線を画しており、ここでも触れられていない。
本書は、各王の執政時代ごとの人間ドラマを描いている。そしてそのドラマはまさに波乱万丈である。繰り返されるカトリックとプロテスタントの宗教戦争、王の暗殺、王と母親との対立、王太子の早世。とくに「太陽王」といわれ、フランスにおける絶対王政を確立したルイ14世は、その治世は70年近くに及んだが、その間に孫にまで先立たれている。その後を継いだルイ15世も子に早く死なれ、16世は孫に当たる。その結果、幼い王の誕生、摂政による執政、そして王家内の対立などが常に渦巻く歴史が繰り返された。もちろんそこには王の愛人やその近親者なども絡み合っている。
ルイ16世は親から愛されることのなかった次男坊だった。国王としての資質にも欠け、その重要な役目であった儀礼をことごとく嫌ったという。彼は読書と「鍵と錠前作り」が趣味だったが、それは当時の王にふさわしいものとはいえないだろう。そして、かのマリー・アントワネットの不人気。まさにこうした王家の時代にフランス革命が起こった。その時代に生を受けたのはルイ16世の不運だが、歴史は変革の時代には凡庸な、廃されるべき権力者を配することが少なくない。
ブルボン家の時代は、一方で華麗な宮廷文化を生んでもいる。その時代の人物史を知るには絶好の書である。(杉本治人)