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昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー)

価格: ¥3,456
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: みすず書房
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時代と対決する思想者の声 ★★★★★
第一次大戦への避けがたい時代の動きは、政治家の領土・覇権獲得への野心と、企業家の利権優先のエゴイズムによって作り出されたが、ツヴァイクは、ヨーロッパにおける思想の普遍性を妨げる要因は、文明と技術の進歩、自然の開発と利用を当然とする価値観、白人の有色人種に対する偏見と差別意識、及び一般大衆の旧弊なナショナリズムにあると考えた。大戦中は故郷ウィーンにあって、戦意昂揚の渦巻きの中で戦争拒否の意志を無言でつらぬき、「非国民」の扱いを受けて孤立した。故郷において「追放者」の身分におかれるのは、他国において迫害を受けるよりも耐えがたかった、と後に彼は述べている。
大戦後、ツヴァイクは故郷を捨て、ヨーロッパ各地を移動しながら漂泊者の道を選ぶ。「脱ヨーロッパ中心主義」に自分の思想的立場を位置づけ、後半生の活動を再開するが、早くも1920年代の半ば、不気味な黒い影が地平線に現れ、またたく間に巨大な怪物的姿が迫ってくる。ヒットラーとナチスの台頭である。1934年から短期間ロンドンに住み、最晩年のフロイトと親交を結び、自分たちユダヤ人の運命について語りあう。時代と対峙して、自分の学問と信念に忠実であろうとするあくなき真実の探求者と、その壮絶な死との闘いに立ち会う。しかし英独の対立が露わになり、「敵国人」の嫌疑をかけられるのを避けるため、英国を退去して南米に移住。再婚した妻ロッテとともに、1942年2月に服毒自殺する。「ヨーロッパ時代」の終末期の貴重な証言者であり、そのメッセージは60年後の今、ますます切実味を帯びてくる。
very interesting and readable book ★★★★☆
シュテファン・ツヴァイクの「世紀末ヨーロッパ回想録」と呼ぶべき本書は、著者がパリ、ロンドンをはじめ、各国を旅行しながら知識人との交流をくり返した日々を回顧した秀作です。二つの大戦の同時代人であったロラン、ジイド、ヴァレリー、トーマス・マン、バルトーク、フロイト、ゴーリキーら知識人との想い出を織り交ぜつつ記されているので、ドイツ語原文を読めない方は是非とも、この邦訳書で親しんで頂きたいもの。滅び行くヨーロッパの偉大と悲惨を描いた自伝文学として推奨に値する作品です。