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永久帰還装置 (ハヤカワ文庫JA)

価格: ¥882
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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神林作品のロマンティック部分が前面に押し出された作品 ★★★☆☆
神林作品のロマンティック部分が前面に押し出された作品です。
トリッキーなギミックもガジェットも無し。リンガフランカーはSFらしいガジェットではあるけれど、コンセプト自体は珍しいものではありませんよね。激しいアクション要素も少なめ。言語イメージや解釈によって現実認識は変動する、というテーマは「太陽と汗」や「言葉使い師」、「プリズム」等と共通ですが、前半はほとんど現実認識をロジックとして描かれるため、ハードSF好きにはいまいちかも知れません。

僕は結構楽しめました。ヒロインの変化とかね。僕は神林作品に出てくるヒロインが結構ツボのことが多いです。ちょっと性格がキツいとことか。あと文庫本の表紙のヒロインよりは、ハードカバーの表紙のヒロインのほうがイメージに合いますね。
『メタ的存在』対『人間』の、『言葉』による戦い ★★★★★
いきなり冒頭から数十ページに渡って、かなり難解な事象や説明的台詞が続くという、
『悪い方の神林節』から話が始まるので、かなり取っつきにくい感じは拭えません。
ディープな神林ファンを自称している私でも、序盤は何回か同じところを繰り返して読んで、
その部分を理解できたつもりになってから、続きを読む、という、学術書や哲学書のような
読み方をしないと、話についていけませんでした。

総感として、この作品は『グッドラック 戦闘妖精・雪風』の様に、
『サイエンス・フィクションでありながら、それに留まらない』
という、良い意味でも悪い意味でも、『神林氏らしい』作品だと思います。
『あまり大衆向けでは無い』という点も、また神林氏らしい。
また、ドンパチやメカニカルなシーンは少なく、会話と思索が前面に出ている作品なので、
『メカも無いSFはSFじゃない!』という方には、理解不能、或いは退屈かもしれません。
同氏著作の『言葉使い師』や『プリズム』、『蒼いくちづけ』辺りが好みの方には、
お勧めできると思います。

この作品は、序盤からほのめかされていますが、『メタ的存在対メタ的存在』の戦いであって、
実は人間という存在は、いわゆる『仮想存在』に過ぎません。
しかしそんな人間達が、『言葉』を操り『自分達の存在』を『自分達で創り上げる』という、
『神にしか許されない』ような事をやってのける事で、
メタ的存在の片方(作中では『ボルター』と呼ばれている方)、『自分達を創造した存在』に喧嘩を売りつけます。

特にこの作品のもう一人の主人公(ヒロイン、と言うと違う気がするので)ケイ・ミンは、
『この場(作品中)はメタ的存在の決戦場に過ぎない』という事象をある程度容認しながらも、
その所為で曖昧になった(或いは元々曖昧な存在だった)『自分自身』をあえて自分で壊してしまう事で、
ボルターだけでなく蓮角(もう一人の主人公。彼もメタ的存在です)からも自由になった、
『第三の自分自身』を『自分自身』で創り上げてしまいます。
そしてケイ・ミンが選択した『第三の自分』に合わせて、世界そのものが変容していき、
ボルターが設定した『仮想存在』だったはずの人間達が、ボルターを追いつめていくのです。

しかしその過程が、主にキャラ同士の会話や検索情報などの『言葉』で成り立っているので、
そこも前述したような人には面白くないと感じる部分ではないでしょうか。
尤も私は、仕事中の空き時間に読んでいて、上司に怒られるまで気付かなかったくらい、
のめり込んでしまいました。

『雪風』シリーズとは切り口が違いますが、この作品も『エンタテインメント』だけでなく、
一種の『啓蒙書』としても充分に読める作品だと思います。
でも、『雪風』と同じく、『神林長平入門書』としてはお勧めできないですね。
ちょっとばかりハードルが高いかもしれません。
尤も、私は充分以上に面白い!と感じたので、星5つです。

最後に。
多分表紙の人物は蓮角とケイ・ミンだと思うのですが、正直、私のイメージとは合いませんでした。
ソノラマ版の表紙の方が、私は好みでしたね。
まあ、中身は一緒だと思うのですが。
良質なSF ★★★★★
「帰る」ためには必要なものがある。

作品名は永久帰還装置だが、読み終えると、本当に必要なものが解かる。
帰る先――つまり故郷であり、故郷を故郷たらしめる他者との繋がり、「絆」である。
帰還装置という「物」は、あくまでも「絆」を象徴しているに過ぎない。

人と人との絆を結ぶものは何か? それは言葉であり、言葉を交わして互いの現実を突きつけ合わせることは戦いである。
相手を理解するために、あるいは支配するために、愛や憎しみに塗れながら、人々は様々な言葉を交わして戦い、生きようとする。

登場人物はどれも個性的で生命力を放っており、組織や社会の描写も丁寧だ。

言葉が織り成す物語をじっくりと味わってほしい。
読破できただけ、まだマシか… ★☆☆☆☆
 ”最後まで読んだ”著者の作品では、読んでいて一番退屈しました。
 作品のテーマや登場人物に魅力を感じられないなら、せめて著者が『雪風』他の作品で見せるハードSF的描写を楽しみたいところですが、本書ではそれすら皆無です。
 最近の『敵は海賊』のつまらなさといい、もう著者にハードSF娯楽作を求めるのは無理なのかも。
 
言葉使い師”神林の活躍如実 ★★★★★
べらぼうに面白い! しかも怖い。ひさびさに小説にひれ伏した。まだ前半1/4しか読んでいないが、刑事が《名前》を操作することで現実を変容させるくだりは戦慄・恐怖そのもの。【言壺】でのワーカムウィルス同等の破壊力。【完璧な涙】以上の恐怖。

スペオペ的な火星での検査シーンやら《時空を越える刑事》というギミックが出てくるが、中身は当然ながらいつもの神林、イコール「自分とは何か」「他者と自分を分けるものはなにか」。で、さらに《言葉》が絡んでくる。「これは言葉による戦闘だ」のくだりには痺れた。

上記のとおり、言葉のなかでも《名前》を重視する。妹の名前、ペットの名前。それをある人間の世界に付与しただけで… 読者には妹・兄どちらが正史なのか分からないし、そもそも正史などないかもしれないのだ。−−“言葉使い師”神林の活躍如実。