あまりにも有名な与謝野晶子の歌を、俵万智が訳すとこうなります。
<燃える肌を抱くこともなく人生を語り続けて寂しくないの>
ほかに、個人的な好みで抜粋すると、こんな歌はいかがでしょう
みだれ髪を京の島田にかへし朝ふしてゐませの君ゆりおこす
<朝シャンにブローした髪を見せたくて寝ぼけまなこの君ゆりおこす>
ふしませとその間さがりし春の宵衣桁にかけし御袖かつぎぬ
<おやすみを言って別れた春の宵あなたのシャツに顔を埋める>
古文だと分かりにくい歌も、現代語に訳すと、なんだ、今も昔も恋する心は同じだと思え、与謝野晶子をとても身近に感じます。
最後にもうひとつ
消えむものか歌よむ人の夢とそはそは夢ならむさて消えむものか
<この恋が消えてたまるか歌よみの一時の夢となってたまるか>
晶子の気迫と情熱を感じ、とても好きです。ただし、原文のままだと主語が何なのか分からず、歌の意味がよくわかりません。
みだれ髪が発売されたのはほぼ百年前。百年たつと日本語はこんなにも変わってしまうのです。与謝野晶子の歌に手を加えるなどもってのほか!という批判を覚悟の上で、あえて俵万智流現代語(チョコレート語)に訳すという勇気ある挑戦に、脱帽です。