やっぱり僕は「跳べない」
★★★☆☆
恩田陸さんの初期の作品。「月の裏側」のように、隣に居る人がある日突然変わってしまう、地方都市の日常に泡のように現れる「怖さ」を描いています。
全体的に魅力のある設定と、引き込まれる導入部。恩田陸さんの作品らしく、ついつい読み進めてしまうのですが、気がつくと……取り残されてしまいます。どうしても「跳べない」んですよね。
読者に優しくない……というのは言い過ぎかもしれませんがちょっと消化不良。
初々しいころの秀逸な作品
★★★★★
「小夜子」の次の作品かな。こう言っては失礼だが、まだ「すれていない」頃の作品で、恩田氏独特の雰囲気が色濃く出ていて、私は好きだ。
何ということもない田舎町に重なるようにして存在する「あちら」。それを感じる人間と、一生感じずに済む人間と、行ける者と行けない者。その「あちら側」が、決して楽しい夢ような場所ではなく、荒涼とした草原が広がるだけの世界で、それでも行きたいと願う者がいる。
うまく表現できないのがもどかしいが、今ある「ここ」ではない「あちら側」にずっと惹かれ続けている私には、とても面白かった。残される者の哀しみをきちんと描いて終わるあたり、なかなかである。
ぞわぞわきた☆面白い!
★★★★☆
いや〜またまた恩田陸の不気味ワ−ルドに嵌まってしまいました!
ある田舎の町で高校生の間にたつ奇妙な噂…その内容の異色さから、出所をつきとめようと調べ始める地歴研グループ。誰から何月何日に、どこでその噂を聞いたのか?調べていくと、ある人物に辿り着くが…
何の気無しに読み始めたけど、とまらなくなりました。こんな閉鎖されたような田舎では実際に起こる話だったりして。。と思うとなんともぞ〜っとします。この世界とは全く別の次元も存在してるのかも!と少しファンタジーな気持ちにもなり、怖くもあり。序盤から一体何なんだろう、何が起こるんだろうと思わせる感じがホントくせになる恩田陸です。最後はあれ、終わり?て思っちゃいました。まだ次の章があっても全然おかしくない終わり方だし、まあでもこうなるのかな…と予想させるような終わりも話の雰囲気に合ってるかもしれない、と思いました。
日本の現況を炙り出すような設定
★★★☆☆
読み始めた最初は単なる学園ホラーかと思い、ひょっとしたら時間の無駄だから読むのを中途でやめようかと思ったが、読み進めるうちに登場人物とその人達が各々別個に体験したこととが有機的に繋がってくるのが面白く、止まらなくなった。
東北の小さな町「谷津」。眠ったふりをしたような町。若者はみんな出ていく。でも、出て行ってから戻ってくる人も何人かいる。絶望的な停滞感。夢も希望ももてない。しかし、その町は古代の原初的なものを所々から吹き出し、ある時人はそこからねじれた異次元世界に吸い込まれ、更に跳んでいく。どちらの世界があるべき世界なのかわからない。
停滞したこちらの世界で自分をすり減らすだけで年老いていくことの閉塞感。かといって何かを守るために頑張るとしてその守るべきものは腐臭を放つ唾棄すべきことどもかもしれない。それでもこの世界を、という想いを示唆するところでこの物語は終わる。
僕もたまに思う。自分が特攻隊員だとして何の為に死ねるか?おそらく、美しい故郷の山や川のため、妻子のため、母のため、父のため、僕にやさしかったすべての人のために・・・などを大義名分にして死ねるだろう。そこで措定されている故郷の山や川は現実的には既にそれほど美しいものではなくなっているかもしれない。僕自身が子供のときに見て接したそれを理想的にイメージしたものの為に死ぬのだ。
そのようにこの世の何かを信じていたい。向こうの世界を措定するのでなく・・・
ある都市の物語。
★★★★☆
4つの高校に広まる
うわさが軸になる話です。
ミステリーの雰囲気をたたえながらも
怖くて読めないなんてことは決してありません。
多感な時期である登場人物たちの心情描写で
どんどん読み進めることができます。