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光の帝国 常野物語 (常野物語) (集英社文庫)

価格: ¥520
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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ストーリー・テラーの才能 ★★★★☆
恩田陸さん、凄いストーリー・テラーですね。
「才能は温泉のようなもので、有る所には有るけれど、無い所には無い。」という事を聞いたことがありますが、本当に温泉のような「創造力」の才能を感じました。
恩田さんはあとがきで、「ゼナ・ヘンタースンの「ピープル」シリーズのような話を書こうと思って始めた」と書いていらっしゃいますが(私はこのシリーズを知らないのですが)、私は「常野物語」を読んで、萩尾望都さんの「ポーの一族」シリーズを思い出しました。
ポーの一族はヴァンパイア、つまり吸血鬼なのですが、時代とともに変わりゆく社会の中で、人間と同じ形をしているが特殊な存在である自分たちを、その特殊性ゆえに目立たせず(目立つと抹殺されますからね)、生きていることの業と闘いながら、一族の血を絶やさず繋げていく・・・その感じが常野一族と重なります。
小説というのは、そもそもフィクションであり(ノンフィクションのものもありますが)、フィクションを書くには膨大な創造力が必要なのは言うまでもありませんが、ファンタジーになると、普通の創造力では行けない世界だと思います。
読者は全く現実世界と離れた場所に連れていかれ、逆にそこでしか表現できない「真実」を著者に見せられます。
「現実」が「真実」とは限らない。「真実」を知るために、敢えて「現実」と別の場所に行く。
普通の人間と違う能力を持つ人々の苦悩の中に、普通の人々が抱えている苦悩、社会の問題点が映し出されています。
また、全ての人間は「普通」ですが、逆に全ての人間は一人ひとり違うという点で「特殊」でもあります。
そんなことを感じながら、生きることの業を、特殊な能力を持つ一族を通じて、改めて考えさせられた物語です。
とにかく、話が面白かったです。
超能力者物好きの方へ ★★★★★
不思議な力をもった人々を描いた連作短編集。
なにげないふつうの言葉をつかっていながら、イメージを広げる手腕は恩田陸の特質ですよね。素晴らしい。
目に見えない大きな力。 ★★★☆☆
自分の周りに起こることがあまりにもつながりすぎているとき、
これは偶然じゃなく、必然なのではないかと思うことがある。
知らないうちに何か大きな力によって動かされているのかもしれない。
不思議な本 ★★★★☆
初めて読んだ恩田陸の作品で、その後何冊か読んだ中でも最も好きな作品。

読みやすく、入り込みやすい。
不思議な現実感があって、本当にこういう人たちがいるように感じてしまう。

ちょっとした気分転換にオススメ
本家本元は『ポーの一族』(?) ★★★★☆
作者は萩尾望都ファンで、とくに本書は『ポーの一族』に似ているという話を以前から聞いていて、一度読んでみたいと思っていましたが、今回読んでみて、成程、部分的には確かに似ていると思いました。
似ていると思ったのは「手紙」という話で、いろんな時代にあちらこちらの場所に出没するツル先生が、果たして同一人物だろうかという話ですが、これは『ポーの一族』の「ランプトンは語る」にそっくりです。

「いったい、日本中、どれだけの場所でこの先生は草履を履いて校長をしていたのだろう。」(「手紙」より)
「世界のどれほどの地域、どれほどの年代にわたって、偶然にもエドガー・ポーツネルという名が書類にちゃんと記されているのか?」(「ランプトンは語る」より)
この相似は決して偶然ではなく、作者は『SF Japan』06年秋号での萩尾望都との対談で、「私は『ポーの一族』のなかで、とりわけ「ランプトンは語る」が好きなんです。」と語っていることからも、「手紙」の設定や上記文章の相似は、「ランプトン〜」を意識してのものであるのが明らかです。
また、「常野(TOKONO)一族」の母音も「ポーの(POONO)一族」とまったく同じです。
ただ、似ているのはここまでで、後はそれほど似ているとの感じはありません。

本書の中核は表題作「光の帝国」で、これは超感動作で、この話だけでも本書を読む価値はあろうというものです。
逆に他の話は今ひとつというか、中途半端な感じのものが多いのですが、「常野物語」というシリーズのようなので、本書の中の話の大半が序章のようなもので、これから物語が膨らんでいくのでしょうね。何にしても、続きもまた読んでみたいシリーズです。