道尾秀介さんの実力を感じた作品
★★★★☆
この小説を読み始めたとき、昔観たニコラス・ケイジ主演の「マッチスティック・メン」という詐欺師が主人公の映画を思い出しました。
当時、この映画のどんでん返しに驚かされた経験があるので、たいして根拠のないことも最初からかなり疑い深く読んでしまいました。
基本的には、とにかく序盤から、登場人物が明け透けに自分たちのことを正直に告白するので、特に大きな疑問も持たずにスルスル読めてしまいます。
しかし、実はなんとなく読んでいた序盤から布石はまかれていたのです。
そして最後の最後で全ての事柄の謎が解けます。
私の場合は変に勘ぐって読んでいたせいか、読了後「そうじゃないかと思ってたんだ」という根拠のない勘が当たってしまった感はありました。
しかし、十分楽しめましたし、普通に読めば騙されるてもおかしくない作品だと思います。
読後感は爽快なものでありますし、登場人物にもそれなりに愛着はもてます。
道尾秀介さんの作品はこれが初めてなのですが、読みやすい文章で構成力も人の描き方も旨く、実力のある作家さんだと思いました。
これから他の作品に手を出したいと思います。
考え過ぎずに楽しみましょう!
★★★★☆
友達に借りて読みました。
道尾秀介は、最近、お気に入りの作家なのですが、この作品も面白かったです。
主人公は、中年の詐欺師と少女。
実は、隠された人間関係がキーになっています。
最初は、それぞれの視点で交互に書かれた章が並んでいて、淡々と進んでいきます。
しかし、お互いが出会ってからの展開はスピード感を増し、一気に結末まで読者を引っ張って行きます。
ドキドキ感が半端じゃありません。
そして、結末・・・あぁ、やっぱりうまくいかないなぁ・・・あれ?・・・あっ、そう来ましたか!
二転三転する物語に翻弄されながらも、読後は爽快な気分です。
読者の評価は、単純に小説として楽しめるかどうかで分かれると思います。
要は、最後の仕掛けを受け入れることが出来るか、ということになるのでしょうか?
ミステリー作品の枠組みに収めてしまうのは勿体ないエンターテイメント作品に仕上がっています。
大推薦作品です。
筋書き通りのドラマは本当に展開可能??
★★★★☆
本書の筋書きのような作風をある作家の文庫で以前に読んだ記憶があります(意外と多いのかもしれませんね)。だからというわけではありませんが、物語の展開自体に強い関心をもったとはいえません。しかし「帯」にある「最高の逆転劇をお見せします。」という文言にはおのずと<注意>が向けられるのではないでしょうか。そうすると、終盤の終盤にかけて「間違いなく何かが起きるぞ!」と読者は予測し、読了して「そうか、そういう結末か・・・」と深い安堵感に浸るのであります。むろん読者のすべてがそうであるというわけではありませんが、少なくとも私の場合はそうでした。物語を構成していた「散りばめられたパーツ」が一気に再構築される、その速度感と緊張感には思わず唸ってしまいました。意外と多いような作風にもかかわらず、です。そこに作者の並々ならぬ力量を十分に実感できることでしょう。
たしかに「うまくできている作品だな」と素直に思います。日本推理作家協会賞(第62回)を受賞した作品だけのことはあると。ただしかし、詐欺師である主人公自身が最後に気付くように「話が出来すぎている」というのは本書そのものについても妥当するように思われます。○○で細々と活動している脇役たちの奮闘ぶりなどが功を奏した結果なのではありましょうが、「そんなうまくいく?」と疑問をもってしまいます。ですから「力作」なのですが、☆4つとします。ワクワクしながら読める作品ですし、読者の期待を満たしてくれる内容でしょう。「カラスの親指」というタイトルの意味など、本書にはいろんな知識はもちろんのこと、家族や人間模様の混沌さ・奥深さを、道尾さん独特の文章でわれわれに語りかけてくれます。ラストは切ないながらもすっきりさせてくれます。
短編集『光媒の花』で山本周五郎賞を受賞したと昨日の新聞記事が伝えていました。おめでとうございます。またの新作を心から楽しみにしています。
謎解きに謎解きに、人間関係が絡んで、トサカよ!
★★★★★
とりあえず、トサカの件については、安心しました。
道尾秀介さんの作品は、大好きです。この本も抜群に面白い、ライアーズゲームを読んでいるようで、いろいろなところにいろいろなことが仕掛けてあって、本当によくできた作品です。最後に種あかしがじゃんじゃん、つぎつぎ現れて、道尾作品の中でも、好きな一冊です。
あまり、深く物事を考えるのが好きではないので、軽く刺激があって、面白くて、ところどころにジーンとするところがあるので、何か面白い本ないかな?と探している方には、まさにうってつけです。
時間の無駄にはならないけれど、、、
★★★★☆
『ラットマン』が意外に面白かったために道尾秀介の2冊目を読んでみる。
主人公は過去に傷を持ち、悪者にはなりきれない詐欺師。
そして主人公に命と人生を救ってもらった男と主人公の過去に深く係わる二人姉妹が大まかな登場人物。
ちょっと前に話題になった多重債務者やサラ金問題などを調味料にしながら、
『ラットマン』と同じように人物描写がしっかりとされていて、
本の世界に素直に入っていける作品だと思う。
最後の大仕掛けはそれなりに楽しめるが、
自分的には世界観ができているからこそ、
ここまで大きな仕掛けはないほうが良い後味が残ったのでは?
と感じた。
もちろんこの終わり方を良しとする人も多いだろうけど。