治療がメインの病気の話
★★★★☆
装丁が好きで、気になっていました。
今の世の中、全くストレスなく、常に体調は快調で 原因不明の痛みも痒みも吹き出物もなく、いつだって快便快食、休足安眠、いつでもどこでも焼肉定食、そんな人、いるのかな?
いたらいたで、それも軽く病気っぽいですね。
病気である事が物語になるのではなく、症状が出て、それを治す為のあれこれが物語となっています。
ああ、病気だろうとなんだろうと抱えて生きていくしかないんだよな、と改めて思う。
穏やかに風が吹くような。
★★★★☆
まず、タイトルが秀逸だな、と思った。
「漢方小説」、その通り。
気持ちの痛いところにじわじわ優しい。
読んでいくうちに、
なんだか自分のこころやからだが愛おしくなってくる。
びっくりするような派手な事件は起こらない。
起こらないけれど、ふふ、と小さく微笑ませるユーモアと、
優しく穏やかなのに軽妙な筆致で、
最後までスルスルスルーッと読ませてしまう。
いやはや、うまいものだな、と思う。
いかなる読書好きでも、
「きょうは重たいものを受けつけない」
そんな日があると思う。
そういう日のこころには、この「漢方小説」がおススメ。
小さく、ふふ、と笑ってください。
自分のこころとからだを慈しむキッカケにするのもいいですね。
読む漢方薬
★★★★★
私もこの小説の主人公と同じような体験をした。
自分の健康には自信があったのに、30代のときに
原因不明の体調不良に次々と襲われた。
あちこちドクターショッピングしても、
どれだけ検査をしても異常なし。
当時の私は、とにかく病名が欲しくて、
明確な原因が知りたくて、ネットや本などで
自分の症状を調べまくった。
結果「身体も心も絶えず変化し、微妙なバランスを
保っているもので、多少バランスが崩れるのは
ごく当たり前のことだ」という結論に達するのに
何年もかかった。
そのとき、この本に出合えていれば
もっと早く楽になれただろうに。
読み終わったあと、清々しい気分になり
なぜか元気がでてくる。そして、
危うく揺れ動く心と密接につながった
肉体を持つ「人間」という存在が愛しくなる。
身体に優しい漢方薬のような小説である。
男とくっついてハッピーエンドというわけではないのがいい
★★★★☆
自分が高齢独身女性なため、恋人が見つかりました、めでたしめでたし、な小説はあまり楽しくない。その点、この作者は前に読んだ「建てていい?」でもそんな感じじゃなかったし、今回もそういう単純なオチではなかったので、私は気に入りました。いい歳で一人で都会で生きている女性の不安感を良く表していると思います。私もこんな漢方医の先生に診て欲しいです。
疲れた心身に効く小説
★★★★★
作者中島さんは情けない心境や状況描写が実に上手い!
全身がロデオマシーン状態になり救急車で運ばれる、『えー、三十一歳女性』である主人公みのり。
年齢を言われた事で逆上気味になり、聞かれてもない事まで救急隊員にベラベラ話してる最中、
病院に着く前に何事もなかったかの様に震えは止まる。そりゃ気まずいだろうなぁ、2人とも。
その後も身体は一向に回復の兆しを見せず、みのりは病院を転々とする。
が、検査結果特に異状なし。ストレスについて聞かれるばかり。ストレス?
『昔の男が結婚したショックで体を壊しただなんて、ぜぇーったい、死んでも思いたくないっ!』。
ジタバタする。で、高校時代に体質改善の為に漢方医に通っていたことを思い出す。
久しぶりの場所には。風変わりなイケメン漢方医しかも凄腕。
『以後、この先生に私はドキドキすることになる。』って、おいおい!!。
そこからの展開も、みのりの仕事状況や飲み仲間との奇妙な人間関係、ちょっとした恋愛模様、
その全てが身体や気持ちに関係してくるって
東洋医学の考え方を分かりやすく説明している内容になっていて面白かった。
みのりが前向きに変わり続けるのを読んで、なるほどなぁと
漢方についてのイメージが断然良くなりました。
この小説、笑えるし為になるし、 何より元気になるし最高です!!