感動した!
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有名な『オペラ座の怪人』の、怪人の生涯を描いた小説。
私は映画を見て『オペラ座の怪人』にはまり、この小説のことを知って読んでみた。
エリックの心の変化がよく分かり、オペラ座に住むまでは最も彼が恐れていた、『愛』に対するエリックの戸惑いが伝わってきた。
映画では語られなかった数々の場面が、まるでそこで見ていたかのように目の奥に映る。
読み終わった後の感覚は不思議なもので、読んだ後に頭の中でもう一度物語を巡ると涙が溢れてくる。
最後に出てくる子供と、エリックの父の名(または本来のエリックの名前になるはずだった)が同じところに作者の些細な愛を感じた。シャルルが幸せな人生を送ってくれたことを祈る。
「オペラ座の怪人」に魅せられた著者
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これは「オペラ座の怪人」(ファントム)に魅せられた人の書いた小説です。だから読む人もこんなにも魅せられるのだと思います。「オペラ座の怪人」の小説、映画、舞台は数あれど、原作以外に、これ程自信をもって人にお薦めできる作品は初めてかもしれません。素晴らしい人物描写、豊かな感情表現、芸術的とも言える文章力。歴史的背景も調べつくしていて、かなり動きのある内容ですが「?」と思うところがありません。
原作「オペラ座の怪人」のラストで「なんで〜!」と思う人は結構いると思いますが、もし、ラストでエリック(ファントム)とクリスティーナが結ばれていたら、何百年もの間、これ程人々の心を惹きつけたでしょうか?
悲恋だったからこそ、ファントムの「愛」は崇高であり、深く、かくも美しく永遠になった。だからこそ、人々は惹かれる。
妖しくも美しい、残酷でありながら崇高。その世界観にどっぶりはまれる作品です。
たくさんの人に酔いしれて欲しいですv
一人の男、一人の人間として…
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「オペラ座の怪人」の、波乱に満ちた人生の後半生を描いた下巻。
上巻と同様に、数人の「一人称」で語られています。まず、上巻から引き続き「ペルシア人」ナーディルが、スルタンの宮殿での危険と退廃に彩られた生活を語り、その後、原作・ミュージカルの舞台となったパリ・オペラ座に移ってからは、エリック本人とクリスティーヌの二重唱で愛情と恐怖の葛藤が狂おしく語られ、そのまま激情のクライマックスへ、そして、クライマックスを美しく彩るエピローグでは、年老いたラウールが静かに語ります。
目次を見た時には、「なぜ締めくくりが恋敵のラウール?」と思いましたが、読めば、彼にしか語れないということが、そして、彼が語るから、切なさが一層深まっているのだということが、よく解ります。
私は、映画の「オペラ座の怪人」を見た後にこの作品を知ったのですが、ジェラルド・バトラーはこの本を読んだのかしら?と思うくらいに、イメージが重なりました。(当時は原書が絶版状態でしたから、読んだ可能性は低いです。とすれば、ジェリーの理解力・表現力は凄い!)
「悪魔」「天才」「化け物」「天使」「幽霊」「怪人」…様々に呼ばれ、畏怖の対象であり続けたエリック。でも、彼は一人の人間なのです。愛し、愛されたいと願う、一人の男なのです。その才能と容姿から、時にはファンですら忘れそうになるこの単純なことを、この本は丁寧に描いています。虐げられ、裏切られて、心をずたずたに引き裂かれながら生きてきた一人の孤独な少年が、人として、最後の最後に幸せを手に入れられた時、誰もが涙せずにはいられないでしょう。
聖家族の復活
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この小説の終わり方、カトリックの方はピンと来たのではないですか。
250ペ−ジ 「神はマリアを選びたもうたように、あなたさまをお選びになったのだと」
329ペ−ジ クリスティ−ヌの繰り返す祈りは「聖母マリアへの祈り」
つまりラウ−ルは身籠った婚約者を引き受け、妻とその子供を守ることで聖ヨゼフの役割を果たしているのです。一見不自然極まりない終わり方のように見えながらどこか浄化された雰囲気を読後に感じるとしたら、最後にクリスティ−ヌ=マリア、ラウ−ル=ヨゼフ、シャルル=イエスの聖家族が成立したからでしょう。実際、クリスティ−ヌもラウ−ルもエリックもシャルルの存在によって救済されているのですから。
真実に気づかされる一冊。
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オペラ座の怪人をご存知の方は数知れず。
しかしながらこっちまで知っている方は少ないんですよね。
私としては、上巻のレビューにも書かせていただいたのですが、
原作を読み終えた後にこの物語を読むのがお勧めの読み方。
原作一冊で真実を知ろうと思っても、
なかなか本当のところは曖昧な表現に変わっていたり、
良くわからなかったり。
そこで、この上下巻はそんな素朴な疑問を解決する手立てに
なってくれることでしょう。
物語の真相が、エリックの視点から、ダローガさんの視点から、
ラウールの視点からと、様々なカタチで表現されています。
私としては、エリックとクリスティーヌのやりとりを
クリスティーヌの日記のようなカタチで表現している所が
読んでいて、とても楽しかったです。
エリックに首ったけな私ですが、エリック好きならなおさら
是非、買ってエリックの過去を知って欲しいと思います。
ですが残念ながら、ラウールファンの方にはあまりお勧めは
できません。ラウールが語るのは最後の一節で、
一番いい所を任されている割に、何を言いたかったのか
明白にならないんです・・・。
そこだけザンネンだったかな。
でも、満足したので星五つ。