1875年、19世紀の鉄の建築で近代的な公共図書館が誕生した。フランス国立図書館リシュリュー館だ。設計はアンリ・ラブルストとジャン=ルイ・パスカル。華奢な鋳鉄の柱が9つの丸天井を支える閲覧室や、広い空間が印象的な楕円形の閲覧室が設けられている。また、外観は多くの彫刻で彩られ、静かな中庭も擁している。フランス国立図書館の歴史は、蔵書数917冊だったシャルル5世の王立図書館に遡り、1537年にフランソワ1世が国内で出版された本をすべて収めることを義務付けた。16世紀後半にはパリに移され、17世紀後半にはルイ14世の財務総監コルベールが、現在の2区リシュリー通りに移設。その後、18世紀前半を通して国立図書館として整備された。
ウィーンから西へ約18キロメートル、圧倒的な迫力をもってドナウ河畔にそびえ立つメルク修道院。修道院を含むこの土地の景観は、2000年にユネスコ世界遺産に指定された。また、この修道院付属の高校は、オーストリアに現存する最古の高校として知られている。修道院の数多くの建物のうち、図書館は、教会に次いで重要な施設である。18世紀初期に完成したバロック建築の図書館。閲覧室天井のフレスコ画には信仰の象徴である女性像が描かれ、「賢明」「公正」「勇気」「節度」を表す天使たちに囲まれている。また、精巧な細工が施された書架に、革表紙の本がずらりと並ぶさまは圧巻。まさに中世から受け継がれた知の宝庫だ。
アメリカ・ワシントン州西海岸の町、シアトル。市の運営する22の図書館のうち最大規模の施設が、シアトル公共図書館中央館だ。外観も内部も斬新なデザインで、現代建築の図書館としては世界有数の知名度を誇る。2004年に中央館が開館。設計はオランダ出身の建築家レム・コールハースと地元シアトル出身の建築家ジョシュア・ラムズ。11階建ての建物で、総床面積は33,723平米。壁・天井はアルミニウムの薄い網をガラスに重ね、太陽光の入り方を調節しており、植物のカーペットが敷かれたロビーは通称「リビングルーム」と呼ばれている。館内にはオレンジ、赤、ピンクなどのアクセントカラーが随所に施されている。
ルイス・バラガン、フェリックス・キャンベラ、ペドロ・ラミレス・バスケス、ファン・オゴルマンなど、近代建築の宝庫であるメキシコ・シティ。バスコンセロス図書館は、新たにメキシコが生んだ新進気鋭の建築家アルベルト・カラチの設計により2006年に完成した。およそ38,000平米の敷地に44,000平米以上の総面積を持つ細長い形状の建物があり、周囲は広大な植物園になっている。内部は天井から吊るされたスチールの書架が延々と宙に浮くダイナミックな空間。ガラス張りの壁や大きなトップライトによって、実に明るく、開放的だ。書架には6つのレベルでアクセスでき、中央は吹き抜けになっている。
ポルトガル人建築家ハファエル・ダ・シルバ・エ・カストロによって設計されたこの建物は、かつて一大海洋帝国を築いたマヌエル1世の名に由来するポルトガル独自のゴシック建築様式であるマヌエル様式で作られている。ファサードには、ポルトガルから船で運んできたリオス石がふんだんに使用され、詩人ルイス・デ・カモンイスや、ブラジルを発見した航海士ペドロ・アルバス・カブラルら、4人のポルトガルの偉人たちの彫像が来館者を迎える。「読書の間」に入ると、ステンドグラスのトップライトから光が注ぐ、静謐な空間が広がる。鉄製のシャンデリアや階段、象嵌細工を施したブラジリアン・ローズウッド製の家具など、重厚なインテリアが荘厳な雰囲気を醸している。