(スペイン)
マドリードの北西45kmに位置するエル・エスコリアルは、王立修道院と王室御用地からなる世界遺産である。
修道院の建築様式には、敬虔なカトリックだった国王フェリペ2世の趣向が反映されている。左右対称な構成、幾何学的な精密さ、余計な装飾の排除、調和のとれた立方体が特徴的で、エレラ様式と呼ばれる。
修道院図書館は、修道院と神学校を結ぶ通路でもあるため9×54mと細長い。半円筒形の天井には、フレスコ画が全面に装飾され、大理石の床には彫刻を施した木製の書架が立ち並ぶ。当時のスペインの繁栄が偲ばれる、豪華絢爛ながらも落ち着きを兼ね備えた空間だ。
蔵書には、異端審問で押収された発禁本など貴重な資料が多くあるため、図書の利用は一般には開放されていない。
オーストリアの中央、豊かな自然に囲まれたアドモント修道院図書館。アドモント修道院が創立された1074年、母体となる修道院から書物が移されたのが、この図書館の始まりである。
1776年に建設された現在の図書館建物は、完成時にはあまりの華麗さで人々の度肝を抜いたという。長さ70m、幅14m、高さ13mの堂々たる後期バロック様式の空間で、修道院図書館として現在も世界最大規模を誇る。
閲覧室には白地に金で飾られたロココ様式の書架が備えられ、16世紀から20世紀初頭までの7万冊もの書物が収められている。書架の純白と金色、書架の間の窓から差し込む光によって室内は非常に明るい。その他、7つの丸天井に描かれたフレスコ画や、菩提樹の木にブロンズのメッキを施した彫刻などの装飾がなされている。
インフォメーション・コミュニケーション・メディアセンター (ドイツ)
マルチメディアを図書館に組み込み、情報化に対応したこの図書館は、世界的な建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンによる設計のもと、2004年に完成した。
地下2階、地上8階建の鉄筋コンクリート造の建物は、2層のガラスのファサードに覆われてカーブを描いた、アメーバ状の外観が特徴的だ。5千枚以上のガラスパネルで構成され、内側には断熱ガラスを使用している。
内部では、2階から7階までを貫く直径6mのらせん階段と、床や壁に使われている赤、青、黄、緑、ピンクの鮮やかな色彩が目を引く。ポップアート的な感覚が楽しく、明るいイメージを持たせている。
1928年に完成したストックホルム市立図書館の設計者は、北欧の代表的建築家エーリック・グンナール・アスプルンドである。彼の代表作となったこの建物は、北欧の新古典主義スタイルの最たるものとして、「スウェーデンの優美」と謳われた。
「アスプルンド・ハウス」とも呼ばれるこの図書館の外観は、円柱形の高い建物を四角い低層の建物が取り囲む珍しいデザイン。赤茶色の滑らかな外壁が独特の雰囲気を放ちながらも、周囲の景色と見事に調和している。
エントランスを抜け館内に入ると、中央閲覧室の大空間が広がる。書架の3倍の高さまで吹き抜けになった円形のホールは、四方をシンプルな小閲覧室に囲まれ、印象的な空間となっている。
スティーブン・A ・シュワルツマン館 (アメリカ)
1911年、既に世界経済の中心地であったニューヨークに、「公立」ではなく、すべての人々に門戸を開く「公共」の施設としてニューヨーク公共図書館が完成した。現在も連邦政府から補助を受けてはいるが、専門家や一般ボランティアによる無償の労働提供によって支えられ、運営費の大部分は寄付やイベントなどで賄われている。
本館のスティーブン・A・シュワルツマン館は1906年末に完成し、内装にはさらに4年半の歳月をかけた。最も広い部屋は「ローズ・メイン閲覧室」。横23.7m、縦90.5mという巨大な一室にオーク材の長机が延々と連なるさまは、見る者を圧倒する。高さ16mの天井からは銅製のランプが吊るされ、天井一面には鮮やかな空が描かれている。