「生きる」と言うこと
★★★★☆
この本は「天使の卵」の続編です。
でも、両方を通して読みたいのでなければ、この本だけで十分に楽しめます。
と言うか、「天使の卵」を知らないで読んだ方が、夏姫と歩太、それに春妃との関係が、主人公である“フルチン”こと古幡慎一と同様「謎」として読み進めることが出来るので、こと「天使の梯子」を読むにはむしろいいのではと思います。
それだけ、夏姫は「原罪」という言葉を使っていますが、彼らの背負っているものは大きく、その十年の重荷から一気に「解放」に向かうのが、この本のクライマックスで、そこでこそこの本の感動、共感が一気にやってきます。その効果がより大きくするためには、むしろ前作を読んでいない方がいいようにさえ思えます。
この夏姫が言う“原罪”とは、かつて心ない一言が取り返しのない結果をもたらしてしまったことにあります。
彼女は「誰に何を言われても消えない後悔なら、自分で一生抱えていくしかないのよ」と語っています。
「天使の梯子」という言葉は、雲間に隠れた太陽や月からの光が一本の筋となって地上に降りているのを言うようですが、この本は“原罪”を背負った夏姫に降りてきた「天使の梯子」について語っているようです。
言い換えれば、“原罪”を背負って生きてゆくのが、人間が「生きる」と言うことだと、夏姫が理解する、悟る本だと言えます。
そうしたことは、大なり小なり人が生きてゆく上で持っているものだけに、共感も大きいのだと思います。
天使の卵とは別作品であることを重視して
★★★★☆
生涯尊敬と愛が止まない作品「天使の卵」の続編となれば「心して読まねば!!」
ということで、刊行から数年たってやっとページを開けた私でした。
村山由佳氏と運命の出会いは、「おいしいコーヒーの入れ方」。
そして、さらに運命の本、「天使の卵」と出会う。
さて、今回はその続編にあたる本となるわけだが。
敢えて読むにあたり、注意点があると私は思います。
以下に該当する方はあまり読むことをお勧めしたくない。
・天使の卵こそ生涯の本だと思う
・あの展開が、あの内容の濃さ(&ドラマ性)こそが魅力だ。
・だから、当然この書もそれなりの覚悟をして読まねばならないと思う。
…というのも、必ずしも「天使の卵」のファンなら「読むべき作品」だとは思わないからです。
いや、いっそ読まないほうが良いのかもしれません。
例えば、「天使の卵」がそれを作り上げる為に、体中万遍無く鋼のような筋肉を蓄えてそれに挑んだ作品であるとするならば、
この「天使の梯子」は鍛え上げたそれのお陰で逆三角形になりかけていた体が幾分スリムになり、キレイに整って、とても柔軟性のある美しい筋肉になった…そんな感じのする”今”の村山由佳そのものであると思われます。
書の内容は間違いなく、前作の後のお話。
だけれども、別の作品であると私はとらえました。
”今”の村山由佳を感じたい方はぜひに。
今と昔の変化を見比べて見るのも面白い読み方な気がします。
私は何年も変わらず、もちろん今も彼女の作品の愛読者で、尊敬する方の一人です。
何度も読みたいと思える本
★★★★☆
何気なく読んだ雑誌に掲載されていた短編小説を読んで、<あぁ、この文だ>と思いました。
この日のうちに図書館に行き、手に取ったのが天使の卵と梯子。私は梯子から読みました。
主人公は男の子だし、最初はつかみどころのない、やりきれなさがあったのだけれど、読み進める手が止まりませんでした。登場人物の一挙一動が胸を打って、苦しくて切なかった。
恋をしている、恋を終えた、これから恋をするすべての男女に読んでほしいと思いました。
私は「梯子」で感じた思いを大切にしたいので、当分は「卵」は読めないと思います。
薄い…
★☆☆☆☆
天使の卵とやらを読まずにこちらを購入
主人公が勘違いしてヤキモチやいていることに関しては何となくこうだろうなーと先読みできました。おばあさんとの関係には涙ぐんでしまったのだけど、後半は…なんだか薄い言葉の羅列で、説明をたたみかけているのが続き、なんだこりゃと嫌になってしまいました。死という重厚な題材に対してこの会話と展開が何だか陳腐にすら感じました。高校生向けくらいかな?
量産型?
★☆☆☆☆
多作の村山先生。お忙しいのは分かるし、他にシリーズを抱えているのも理解できる。でも同じ集英社でしょ。調整できるでしょ。雑すぎるよ、この作品。主人公の扱いが酷すぎるよ! 名前も思い出せないよ! 文体もいつもと違うよ! プロットの時点で「ヤバイかも」って思ったでしょ!?
真面目に書くと、最近の癒しブームや所謂「メンヘル」に阿った著作。前作の歩太よりもリアルな設定の主人公だが、それでも「創作」が無い小説に意味なんか無い。「能く聞く話の接ぎ剥ぎを、自分の著作に接いじゃった」、それじゃあプロじゃない。
感動なんかに餓えちゃいない。ただ、心に滲み入る神韻のような美しい物語が読みたいのだ。お願いしますよッ、村山センセイっ!