戦後日本人は「物質的に豊になれば幸福になる」「多く持つものが幸福である」という幸福観で、70年代、80年代に世界中が驚く経済発展を遂げました。しかし、その後のバブル崩壊、グローバル化、リーマンショック、東日本大震災を経験して、日本人の物質に依存した幸福観は大きく揺らぎました。そして、何を指針に生きていったらよいのか分からない時代に突入しました。
このため、生き方について、多くのセミナーが開催され、沢山の本が出版されています。しかし、それらは過去の偉人の生き方や現在成功している本人の体験談が主で、単なる成功者の一例であり、全ての人が目標とできる生き方とはなっていません。また、青年期の自己実現系の本や老年期をどう生きるかといった内容の本は多く見られますが、「中年の危機」と言われる中年期の生き方にスポットを当てた本はほとんど見られません。
著者は主に慢性うつ病やパーソナリティ障害など医者に行っても治らない人のカウンセリングを日々行っています。そのカウンセリングでの経験を元に、全ての人に当てはめることができる幸せになる生き方を提言していきます。
人生を山登りと見なし、40歳までを登り、40歳以降を下りと考え、主に40歳以降の下りの行き方を考えます。
上巻は序章、１章、２章、下巻は３章、４章、５章からなります。
序章では幸せな人生とはどういう人生かを考えます。
１章では、40歳からの生き方を考える上で、40歳までの生き方を簡単に取り上げます。人生の山の登り方をどう覚えるか、そして自分の登る山の決め方を取り上げます。この自分の登る山がその人のアイデンティティで、自分のOnly Oneの世界になります。20代、30代は高い志を持ち、がんばって自分の山を登るのです。
２章では、40歳からの人生の山の下り方を説明していきます。40歳からはOnly OneからONE FOR ALLへ生き方を変えることを提言します。がんばる生き方を止めて、ありのままの自分を受入れ、周囲の人と人生を楽しむのです。このためには、いい人になるのを止めて、自分の素直な気持ちを言い、怒りや悲しみの感情を素直に感じることが必要となります。
３章では、40歳以降に出てくる老い、病気、死を受入れていくことの大切さを説明します。自分の死を受入れて、死生観を持つことにより、１日１日を大切にし、感謝の心を持ち、死後に何かを残したいと人生に対する考えは大きく変わります。
４章では、60歳以降のハッピーリタイアメントの楽しみ方を語ります。人生でやり残したことをやって、かわいいおじさん、おばあさんを目指すのです。また、元気に長生きする方法を考えます。
５章では、１章から４章までの内容を踏まえて、幸せな人生について考えます。40歳までは大学、仕事、地位、恋人、お金、マンション、ブランド品などを獲得することに幸せを感じます。しかし40歳以降の幸せとは受入れることだと提言します。自分の素直な感情や考え、欠点、悩み、欲望、老い、病気、死、そして自分の運命を順番に受入れていきます。カウンセリングで行っていることはこの受入れていく過程なのです。様々なことを受入れていくにつれて、次第に生きるのが楽になって、幸せを感じる時間が増えてきます。獲得はほんの一握りの勝者のための幸せですが、受入れていくことは全ての人に開かれている幸せなのです。
本書で、読者が生きる指針が得られ、死ぬときに悔いのない人生を送れることが著者の願いです。