私たちが日常よく用いる愛や恋という言葉にどれほどの多様な心の動きが詰め込まれているか。逆にいえば、うれしい・安心する・気持ちがいい・苦しい・不安…こういった相反する感情をすべて含む「愛する」や「恋する」とはいったいどういうことなのか。
抽象的思考を持たない主人公祐哉はこういった問題に正面から立ち向かわざるを得ない立場にあります。そして、木原音瀬は当然祐哉の行動を追いかける読み手にもこの問題に立ち向かうことを強いるのです。
私にとっては読んでいてとても苦しい、でも何度も読まずにはいられない本です。