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中世神話 (岩波新書)

価格: ¥672
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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伊勢神道における天のヌ矛と豊受大神 ★★★☆☆
 1946年生まれの日本宗教思想史研究者が一夏で書きあげ、1998年に刊行した本。中世神話とは、古代の記紀・仏教神話に取材した、中世の注釈書・神道書・寺社縁起・本地物語などに含まれる、宇宙の創世や神々に関する、主として断片的な言説の総称である。本書ではそのうち、中世伊勢神道に注目し、天地開びゃく・国生み・天孫降臨を素材に、古代神話の組み換えによる中世神話の生成を解き明かそうとする。伊勢神道は伊勢外宮神官度会氏が、経済力と密教的両部曼荼羅を背景に、天照大神を祀る伊勢内宮に対抗して、本来記紀に登場しない豊受大神の権威を高めるために創造した神道である。豊受大神は本来食物の神であったが、伊勢神道では開びゃく第一神(天照より上位)の天御中主神と同一視され、水徳の神とされた。また本来国生みの呪具であった天のヌ矛は、中世神話では魔を打ち返す独股金剛杵や竜神、心御柱と同一視され、とりわけ開びゃく時の葦牙のような霊物と結びつけられた。本来幼童の稲神であった天孫ニニギ尊も、中世には独股金剛杵を体現する軍神と見なされ、天照との関係が希薄である代わりに、むしろ天御中主神との関係が重視された。このように、中世神話では根源的な霊物としての天のヌ矛が重視されたため、それが伊勢にあるかどうかが議論になる。伊勢神道の影響を受けた北畠親房は、最終的にはそれを否定し、三種の神器を絶対化するに至った。著者は古代・中世神話のテクストから引用しつつ、以上のような天のヌ矛と豊受大神をめぐる神話の変容を跡付ける。本書の内容は確かに興味深い(おそらく出版技術の未発達ゆえに、こうした変容が可能になったのだろう)が、伊勢神道に注目する理由がよくわからないため(中世における天照大神の非中心性を強調したいのか)、イメージの広がりは分かるものの、話の筋道がいささか見えにくい。
コスモロジーに見る日本人のこころ ★★★★★
新書とは入門書である、という前提を採るならば、あるいはこの本は狭き門かもしれない。しかし、この門を叩いた者はゆたかな果実を手にすることだろう。

神話といえば、まずは古代だが、それが中世において如何に変容し、跳躍していったか。神話の宇宙論的・コスモロジー的意味に焦点を絞っているのでとてもイメージがゆたかだ。水の神、天のぬ鉾、葦の葉、稲の王、…といったキーワードの中に日本人のこころの鍵が秘められている。
何度でも繰り返し読みたくなる新書は、そうはない。もっとひろく読まれていい本だと思う。
なお、本書はもっぱらイメージの世界を探究している。最近ちくま新書から出版された佐藤弘夫『神国日本』は中世における現実認識をも射程におさめている。併読をお薦めしたい。
これは、「新書」で出す内容ではない! ★★★★☆
 「新書」を軽蔑したり、軽く見るつもりは全くないけれど、これだけの内容〜但し、字数の制約のためか、簡略化されてる部分と思われるところが多かった〜をあらわすなら、資料集をつけて、しっかりと検証すべきでなかったか?
 何か肝心のところに行くと、肝心なことが書いてない、歩いた省略されているという印象を持った。
 せっかくの作品が残念だ。

難解で、カオスと呼ぶにふさわしい中世神道の世界に潜る! ★★★★★
 主に中世神道の根幹をなす伊勢の度会神道を取り上げる。中世人の宗教的要求に見合うべく大胆に変貌する古代神話と神々、そして古代人の神話学の範疇を踏み破る新たな宗教思想とは。

 度会神道の名を知ってはいても、その内容まで知っている人は少ないのでは? かくいう僕もその1人。だから、度会神道が伊勢外宮の祭神《豊受大神》を中心に展開したのだという基本的なことを、この本を読んではじめて知りました。驚きなのは、度会氏の狙いが内宮の国家神・アマテラスの従属神に過ぎない《豊受大神》をアマテラスと対等以上の神として格上げすることにあり、そのために構築されたのが度会神道だったということ。第六天魔王と日本の王権を関連づけるなど、中世信仰をおかしな宗教だと思っていたが、まさか神宮内部でアマテラスの権威を失墜させるような動きがあったとは。知らない人間にとってはまさに青天の霹靂。関心がある人は読むっきゃないでしょう。

 が、度会氏の強烈な上昇志向や、後世の神道観を決定づけた北畠親房について触れたくだりを読むにいたり、明治から現代にいたる日本の姿にダブって後味悪い。とても刺激で、いろいろな意味で怪著というべきだろう。しかし本書は中世神道のごく一部に触れたのみ。新著が望まれる。