度会神道の名を知ってはいても、その内容まで知っている人は少ないのでは? かくいう僕もその1人。だから、度会神道が伊勢外宮の祭神《豊受大神》を中心に展開したのだという基本的なことを、この本を読んではじめて知りました。驚きなのは、度会氏の狙いが内宮の国家神・アマテラスの従属神に過ぎない《豊受大神》をアマテラスと対等以上の神として格上げすることにあり、そのために構築されたのが度会神道だったということ。第六天魔王と日本の王権を関連づけるなど、中世信仰をおかしな宗教だと思っていたが、まさか神宮内部でアマテラスの権威を失墜させるような動きがあったとは。知らない人間にとってはまさに青天の霹靂。関心がある人は読むっきゃないでしょう。
が、度会氏の強烈な上昇志向や、後世の神道観を決定づけた北畠親房について触れたくだりを読むにいたり、明治から現代にいたる日本の姿にダブって後味悪い。とても刺激で、いろいろな意味で怪著というべきだろう。しかし本書は中世神道のごく一部に触れたのみ。新著が望まれる。