予定調和の美しさ
★★★★☆
有名な景勝地(今回はジブラルタル!)で小規模な学会が招集され、そこには旧知の仲間たちが集合。観光案内と学術的知識を盛り込みながら、「さりげなく」過去の因縁や確執を伏線として用意。そしてあまり血なまぐさくない、というか細かい描写をしない殺人が起こる・・・、といういつものパターンながら筆者の力量と登場人物のキャラクターで見事に引き込まれてゆく。まさかの大ドンデン返しは期待できないが、風景や食事の表現、会話の巧さは筆者ならではの際立ち感。こういう安定したシリーズものこそがミステリーの王道であり、読み物としての一級品だと思う。どうか翻訳、発売のペースを崩さずに「文庫で初版」のポリシーを守って末永く続けてほしい。