宮武外骨、というどう見てもけったいな名前は時々見かけていたが、何をしていた人かは知らなかった。この本はその外骨の作った「ハート」「スコブル」「滑稽新聞」などの出版物などからその人を食った風刺、論説(ちなみに外骨はこのせいで入獄4回、罰金発禁29回という言論界の前科モノである)をふんだんに引用した講義形式で筆を進める。それは「引用」というよりは「転載」といっても差し支えないくらいたくさんであるが、それがないと話がわからないという性質のものである。
それもそのはず、著者赤瀬川原平氏が「・・・書きにくいことはわかっていた。それ自体が面白いものって、こちらがそれ以上に書きにくいのである。だからあまりいろいろ書かずに、それ自体をじかに紹介しようと考えた。つまり外骨の残した表現作業そのものを、できるだけ現物紹介しよう・・・」と述べ、さらには「完全復刻版を作ればそれでもういいことにな」る、というくらい、どれもこれも面白いのである。
これは確かに完全復刻版が見てみたい。この本の終わりごろに、覆刻濃縮版が出た、ということが書かれているが、これは本当だろうか。もしかしたら、法螺かもしれない。ああ私はもうこの明治人の世界に足をとられている・・・