そういった物語の面白さとは別に、全編を通じて語られている作者のジェンダーに対する意識も見逃せません。最初にこの本を読んだ時に、何か違和感を感じました。それは、登場人物が男性か女性かわかりにくい、というものでした。この本の世界では、役割や発言に男女差はありません。描写されている体格からでさえ判断がつきにくいほどです。特にこの5作目で、強い者だけが選ばれた世界も、弱い者だけが残った世界も、どちらも不完全なものであった事実が明らかになるくだりがあり、どういう個性の者もひとりひとりがその役割を果たす為にいるんだ・・と言う事が語られています。
小学生くらいならごく当たり前に、大人の人にも難しい理屈抜きに、「男だから」「女だから」が、「あなただから」にスッと変わる本ではないでしょうか。