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『西遊記』と五行思想

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
ブランド: 西孝二郎
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※この作品は、1997年刊『「西遊記」の構造』に修正・加筆を行ったものです。改題もしました。

【第一章 桃太郎と玄奘三蔵】

 桃太郎が従者として引き連れることになった三匹の動物、「猿・雉・犬」からは、十二支西方の「申・酉・戌」がすぐに思い浮かぶ。
 そして、中国の四神という観念においては、東は青龍、南は朱雀、西は白虎、北は玄武であるから、「申・酉・戌」という西方の三動物は、一つにまとめて「虎」として表現することができるということになる。
 そうすると、桃太郎と猿・雉・犬は、「桃太郎と虎」という構図で理解することもできるものとなるが、この構図から、次のようなことが思い浮かぶ。

 敦煌莫高窟から出土した物のなかに「虎を伴う行脚僧」と呼ばれているモチーフの絵がある。また、十八羅漢という観念において、その第十八羅漢は伏虎、つまり虎を馴伏せしめた姿で描かれる……。すなわち、この「虎を伴う行脚僧」や十八羅漢の姿が、「桃太郎と虎」という構図から想起されるのである。

 しかも、桃太郎は、吉備団子を与えて三匹の動物を家来にしたのであるが、団子はその形状から言って数珠を想起させるので、このことは、桃太郎が、数珠(吉備団子)を使った仏教的手段によって虎(猿・雉・犬)を馴伏せしめる、という構図のものとして見ることが可能であり、そうであれば、桃太郎は、ますます、「虎を伴う行脚僧」や十八羅漢の姿と重なってくるのである。

 桃太郎からは、このような意外な人物像が背後に浮かび上がってくるのであるが、さらに興味深いのは、この「虎を伴う行脚僧」にしろ、第十八羅漢にしろ、いずれにおいても、その人物は玄奘三蔵だ、という説があることだ……。


【第二章 五行・十二支・四神・易などについて】

 五行・十二支・四神・易といったものについてのごく簡単な説明を行います。


【第三章 一行五者と五行の関係・1】

 猿の悟空は、十二支の申(方位は西南、五行は土)に相当するので、五行は土であるが、取経の旅に参加した直後、虎の皮の腰巻を身につける。虎は四神西方の動物で、西方の五行は金であるから、悟空は、取経の旅に加わるに際して、土から金へと移行したと見ることができ、これは、五行相生の「土生金」(土は金を生じる)という法則に合致している。

 また、龍は、四神東方(東方の五行は木)の青龍に合致するから、五行は木であるが、取経の旅の一行に加わるに際して、馬に姿を変える。馬は十二支の南の午(南の五行は火)であるから、龍から馬へという変身のうちには、「木生火」(木は火を生ず)という五行相生の理に合致した移行を見出すことができる。

 そして、他の三者にも同様な形を見出すことができるのである。


【第四章 一行五者と五行の関係・2】

 一行五者が、取経の旅に参加する順番は五行相剋の流れに従っていることを示し、五者にはまた、それぞれもう一つずつ別の五行が対応していることを明らかにします。


【第五章 三合】

 三合の法則とは、五行それぞれの生・旺・墓(誕生・旺盛・消滅)の位置を十二支の上に定めたものである。

 〔水の三合〕=申(生)・子(旺)・辰(墓)=北を頂点とする三角形
 〔火の三合〕=寅(生)・午(旺)・戌(墓)=南を頂点とする三角形

  『西遊記』の玄奘・悟空・龍馬という三者は、水の三合と次のような対応になっている(子はねずみではなく、男子の意に解する)。

 ・申=猿の悟空
 ・子=男子の玄奘
 ・辰=そもそもは龍であった馬

 そして、火の三合とは、寅・午・戌の三つであるが、そのうち午(馬)は、龍の変身後の姿であり、寅(虎)は、悟空と三蔵に関わりがある。悟空は虎の皮の腰巻きを身に着けたのだし、三蔵は妖怪によって虎の姿に変えられたことがある。よって、午の三合も、三蔵、悟空、龍馬という三者と大いに関係がありそうであるが、ただ一つ、戌がどのように関わってきているのかがはっきりしない。
 しかし、次のように考えてみることが可能ではないだろうか。
 戌という字には、それによく似た文字が幾つかあって、それを似字と言う。たとえば、戊や戍などである。この内、戊とは十干の一つで、この文字を使った熟語として「戊夜」というものがある。これは、日没から日の出までを五等分した第五番目の時刻のことを言い、それはちょうど午前四時頃の寅の刻に当たるのである。つまり、戌はその似字「戊」に置き換えれば、そこから虎を導き出せるのである。
 こうして、寅と戌からはいずれも虎を導き出すことが出来る。そして、それは、いずれも虎に関わりを持つ三蔵と悟空の両者に、それぞれ当てはまると考えることが出来るだろう。

 ・寅=悟空または玄奘
 ・午=馬
 ・戌=戊=戊夜=寅=悟空または玄奘

このようにして、この三者それぞれが持つ二重の姿は、水の三合と火の三合の組み合わせ(それは六芒星である)で形作られていることが分かるのである。


【第六章 酒呑童子伝説と『西遊記』】

 『西遊記』という物語の主役は、玄奘ではなく悟空だといえるが、悟空は『西遊記』の中で盛んに雷公と呼ばれるから、この旅の一行五者は、雷公と四人の従者(玄奘・八戒・悟浄・馬)という構図で捉えることができるものである。

 これと全く同じ構図を持つものに酒呑童子伝説がある。酒呑童子退治に赴いたのは、頼光とその四天王であるが、頼光は音読するとライコウで、それは雷公に通じる名であるから、ここにも、雷公と四人の従者という構図があることが分かるのだ。

 そして、酒呑童子伝説においては、藤原保昌(ほうしょう)という人物も随行したのだが、『西遊記』にもやはりこのホウショウが関わっている。
 というのも、敦煌莫高窟から出土した「虎を従えた行脚僧」という絵に描かれた僧は玄奘であると推定されているのだが、この絵には決まって、僧を守るものとして宝勝如来(ほうしょうにょらい)が描かれているからである。
 『西遊記』に宝勝如来が登場するわけではないものの、このことから、玄奘がいるところには、そこに守護者としての宝勝もいると見做すことが可能になり、こうして酒呑童子伝説と『西遊記』は「ホウショウ」という共通点でも結ばれることになる。

 また、『御伽草子』以外の諸本において、都に起こる男女の失踪を酒呑童子の仕業であると見抜いたのは安倍晴明であるから、頼光一行の背後には晴明が控えているということになるが、一方、『西遊記』の取経の旅は、唐の太宗、すなわち、李世民(り・せいみん)の命によって行われるのだから、『西遊記』一行の背後にはこの世民が控えているということになる。
 晴明と世民……明はミンとも発音する文字であるから、晴明はセイミンと読むことのできる名であり、まさに晴明=セイミン=世民、ではないか。

 酒呑童子伝説と『西遊記』は「ライコウと四人の従者・ホウショウ・セイミン」という全く同じ要素で成り立つものであることがここに明らかとなる。

 そして、さらに、『日本書紀』に記された聖徳太子らによる排仏派討伐も、これと全く同じ構図を持っているのである……
 

【第七章 一行五者と易の卦の関係】

 悟空は、八卦炉の中で四十九日間焼かれ、その炉の中の煙で目を痛めてしまい「火眼金睛」になってしまったのだが、このことや、悟空が虎の皮を身につけたことなどからは、易の「革」という卦が想起される。
 というのも、「革」は易の四十九番目の卦であり、また、離(火)と兌(金)の組み合わせで成り立つ卦であって、しかも、五爻に「大人虎変す」とある卦だからである。悟空は「革」卦を象徴する存在なのではないだろうか……。

 ……一行の他の者にもこのような、卦との対応があるのかどうかを考察し、それを試論として述べています。


【第八章 『西遊記』と『易経』】

※『「西遊記」の構造』第一部第七章に収めていた「西遊記と易経」については、その部分だけ独立させて「『西遊記』と『易経』」というタイトルでキンドル出版しているため、ここでは分かりやすいところを選んで述べるにとどめています。概要は、「『西遊記』と『易経』」の商品ページをご覧ください。


【第九章 西洋錬金術と五行思想】

 中国の五行思想と西洋の錬金術の関係を極めて大ざっぱに考察した試論です。