【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:みなもと 太郎 出版社名:リイド社 シリーズ名:SPコミックス 発行年月:2002年12月 関連キーワード:フウウンジタチ 9 エスピ- コミツクス SP 50432-30 ふううんじたち 9 えすぴ- こみつくす SP 50432-30、 リイドシヤ 8950 りいどしや 8950、 リイドシヤ 8950 りいどしや 8950
田沼意次、失脚
★★★★★
天明六(1786)年七月、雨台風が江戸を直撃し、印旛沼が決壊する。
被害は江戸全戸に及び、数多くの溺死者を出す、江戸幕府始まって以来の大洪水となった。
この大惨事と時を同じくして十代将軍家治が死去したことで、後ろ盾を
失った田沼意次は、松平定信らの計略にかけられ、失脚させられる。
これに伴い、田沼が進めていた印旛沼干拓や蝦夷地開拓といった事業が
白紙撤回されるだけでなく、田沼派であった者すべてが粛清されてしまう。
田沼が政治の表舞台から追い落とされた後も、江戸城内での醜い権力
争いは続けられたが、その茶番に終止符をうったのは庶民の怒りだった。
大洪水のため、関東の稲が全滅し、米価の値上がりに歯止めがかからなくなった状況に
堪忍袋の尾が切れた江戸の庶民は、天明七(1787)年五月、米屋や、便乗値上げをした
商家を襲い始めた。
世に言う「天明の打ちこわし」である。
しかし、江戸全市で九千軒以上が襲われたという一大クーデターでありながら、
暴徒達はいっさい悪事を働かず、ついに火事も、一人の死者も出さなかった。
フランス革命の、わずか二年前の出来事である――。
かくして田沼意次に悪徳政治家の汚名が...
★★★★☆
「風雲児たち」を最初に読んだのは20年ほど前のことだが、
当時最も私にとって衝撃的だったのが
田沼意次の功績面に大幅にスポットを当てた歴史解釈だった。
小学生の頃に読んだ子供向け歴史漫画では、
「賄賂が全ての汚職政治化」として描かれていたことを明確に覚えているし、
(しっかりとした記憶は残っていないが)高校の日本史でも
そのイメージを覆すような記述はなかったはずだ。
ところがこの「風雲児たち」では、田沼は庶民の味方で
先見性も実行力もあるスーパーな政治家として描かれている。
そのギャップに大いに驚いたものだ。
この第9巻では、ついにその田沼も汚い謀略に落ちて失脚してしまう。
その謀略を首謀したのが、「寛政の改革」の実行者として
ポジティブなイメージで捉えられる松平定信だ。
この謀略の仮定が克明に描かれているわけであるが、
松平一派の陰謀は、田沼を失脚させるだけにとどまらず、
ありとあらゆる「悪名」を田沼に被せるところまで徹底している。
この江戸時代の「政治的陰謀」のために、
昭和の時代に教えられる歴史にいたるまで
田沼意次には「悪徳」の名前がついて回ったわけだ。
これに異を唱えただけでもこの本の価値は高い。
待てよ、この本はギャグ漫画なんだぞ。
真面目な歴史解釈がスゴすぎて、印象に残るギャグが少ないのが残念。
野心に満ちた田沼時代終わる
★★★★★
前巻ではお休みだった大黒屋光太夫一行は厳しいカムチャツカの寒さに次々に仲間を失いながらも雪解けと共にユーラシア大陸を目指す。将軍家治死去と共に田沼意次失脚、松平定信が大老に就任する。定信の田沼憎しは想像を絶するもので、領地没収はむろんのこと、埋立地の破壊にまで至るすさまじさ。そして、近年まで支配的だった田沼悪政の歴史観を決定的にするのであった。
蝦夷探検隊達は沈黙を余儀なくされ、宿願の印旛沼干拓も中止、時代の歯車は大きく逆回転を始める。「寛政の改革」が始まったのである(ちなみにフランス革命勃発の年でもある)。教科書に描かれた歴史とは全く違う展開にうなり、ふつふつと沸きあがる海外事情が幕末への大いなる助走へとなっていく。
波乱万丈たる幕末へ向け、物語は転がる
★★★★★
最上徳内、大黒屋光太夫、林子平らが繰り広げるメインドラマは、南下圧力を増しつつあるロシアがらみ。探険あり、サバイバルあり……この大河マンガに期待される群像劇にどっぷりとハマることができる。
そして、江戸政界の中心的存在として描かれてきた田沼意次の周囲にも不穏な動きが巻き起こる。まさに、クライマックスたる幕末への胎動は始まっているのだ。今後の展開に、ますます期待が持てるというもの。鬱屈たまった庶民による「天明の打ちこわし」の裏側も、実に興味深く読めた。
行動する人をみて
★★★★★
人を理解するに大切なことは、その人の思想だの、業績だのでは無いということは、意外と解らないことだと言えます。思想をあれこれ見ても、思想の背景には時代があり、その時代を考慮して見つめないと必ず誤解をするものです。また、業績と言うものは、ある価値観からみて価値があるというだけのことで、その価値観が本当に普遍的なものでない限り、必ず歪みがあるもので、そこにはやはり誤解が生じます。この巻に描かれる「行動する人」達は、動機において二つに分かれます。そこで価値が在ったか無かったかも、二つに分かれていると思うのですが、それが理解されるには、恐ろしく時間がかかるとのだと痛感します。読み終えて、すぐに善悪とか白黒とかの考えで割り切らずに読まなければいけない本です。