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ワイルド・スワン(中) (講談社文庫)

価格: ¥800
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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本当にノンフィクションと言ってしまってよいのか。おぞましい文化大革命の記録。 ★★★★☆
1956年の春に出された「百花斉放」政策は「引蛇出洞」が目的だった。「右派分子」は知識人全体の1〜10%にあたりこれらを粉砕しなければならないという。5%の「割り当て」が課され母は百人の右派を告発しなければならなかった。「抽簽右派」「厠所右派」「有毒不放」「自認右派」などという死語を我々は忘れてはならない。

1964年の毛沢東による「雷鋒同志に学ぼう」という呼びかけは、「毛沢東崇拝」に向けての巧妙な手口であった。
「毛沢東崇拝の裏には、つねに恐怖という感情がついてまわった。人々はものを考えると言う行為を一切放棄してしまった。・・・子供たちの心には、忠誠の対象はただひとり毛主席のみ、という思想がしっかりとたたきこまれた。」

著者は、「中国人はもとより信仰よりも現世に対する執着の方が強いから、目をみはるような経済発展がなければ、毛沢東崇拝があれほど宗教的熱狂をおびることはなかったと思う。」と書いている。

「中国のフルシチョフ」劉少奇と、仲間のトウ小平と、彼らに同調する党内勢力をたたきつぶすために、「文化大革命」がはじまったのが1965年冬である。
「人民を思いどおりに動かすためには、党から権威を奪い、毛沢東ただ一人に対する絶対的な忠誠と服従を確立しなければならない。」そのために、「熱狂的な毛沢東崇拝と階級闘争の思想をたたきこまれて育った」十代から二十代はじめの若者が格好の道具となった。
「文化大革命」が、1年もしないうちに何百万という紅衛兵を出現させた事実は、教育の恐ろしさを裏付けるものだ。

清廉潔白の共産党員である父が、文化大革命を批判し、毛主席に反対すると公の場で宣言する。「私が知るすべての範囲で、父のような人間はほかにひとりもいなかった」と著者は述懐する。

中巻は、歴史上公にされている事実と、著者の身の回りで起こったおぞましい出来事と、それに、著者の目を通した父と母の勇ましい姿が力強く描かれる。
激動の時代を生きた証 ★★★★★
ロンドン在住の中国人女性ユン・チアン(張戎)。
清代末期に、軍閥将軍の妾として嫁いだ彼女の祖母、
国民党・共産党の激動の時代を生き抜いた彼女の母、
そして、多感な時期を文革の時代で過ごした筆者。
女三代の中国人の生活を通して、20世紀の中国の
実情をありのままに描いたノンフィクション大作。

もともと、この本の存在は知っていて、中国に
来たならば、読んでおかなきゃなと思っていたところ、
ちょうど去年に新しい筆者の巻頭辞が追加された
改訂新版が発行されて、平積みになっていたので、
買ってあったもの。

中国に来てから、中国を知るための本はいろいろ
読んだけど、一番胸に来たのはこの本。
歴史書で深く書かれない内容まで、身の回りの
出来事として赤裸々に描かれている。

でも、十何億って言う中国人民はそんな時代を乗り越えて
生きているんだよね。80以後世代は別として。

毛沢東が(共産党が?)当初に掲げた理想と
今の中国の実情とのギャップを考えると、
今なお毛沢東を崇拝し、今の指導部も彼の後継としての
位置づけになっていることに違和感を禁じえないね。

筆者が生まれ育ち、その母が今も暮らすのが、
先週の地震の被害のあった四川省成都。
被害を伝える映像、救助隊の進む映像を目の当たりにし、
筆者の両親が共産党の職員として、四川省内を
駆けずり回っていた頃の苦労も偲ばれます。
文化大革命の下に生きた人間群を描いた秀作 ★★★★★
「誰も知らなかった毛沢東」で激しい毛沢東批判を繰り広げた著者が、自らの一家の激動の歴史と中国の政局の動きを重ねて描いた感動のノンフィクション作品の中巻。上巻が著者の曾祖母、祖母への賛美・追悼小説に終始して第三者が読む価値がほとんど無かったのに比べ、本巻は上述の「誰も知らなかった毛沢東」で描いた毛沢東の狂気的統治時期と同じ時代を、著者の一家を中心に民衆側から描いた貴重な作品。

著者の小学生から中学生時代の体験が語られ、描写も上巻に比べ圧倒的なリアリティがある。文化大革命が、毛沢東が自らの地位を神格化するためにだけに行なわれた事。そのために、共産党内のライバルを蹴落としたドス黒い陰謀。自分以外を戦闘、消耗させ、自分の絶対的地位を築こうとした策略とプロパガンダ。そのためには民衆の命などは全く意に介さなかった非情。そして、これらに巻き込まれた一般民衆の地獄のような日々がこれでもかと描かれる。特に、著者の父母は共産党の幹部だったため、「走資派」として逆に攻撃の的になってしまうという矛盾。上巻では、型通りに描かれていた父が本巻では義士のように描かれているのが一際印象的である。

当時の江青の驕慢ぶり、周恩来の抜け目無さもきちんと描かれている。人々が平等に暮らせる社会を目指す筈の社会主義が、権力闘争と誤った偶像崇拝を産みだし、逆に極端なピラミッド社会を作ってしまうという矛盾。その中で一番辛い時代を過ごした著者が、その現実を余す事無く晒したノンフィクションの感動作。
共産主義という思想 ★★★★☆
日本の侵略から国民党と共産党の内戦、中華人民共和国の成立、文化大革命に至るまでを著者の家族の親子三代にわたる人生を通して描いたノンフィクション。普通なら省略されるような下(しも)の話などが詳しく書かれているところが印象的。それがこの本にリアリティーを与えている。

著者の父親は、文化大革命の時に、反逆者として訊問を受ける。しかし、それに屈しない父親の態度には感服させられる。たとえ精神病になっても、あくまで自分の信念を貫こうとする態度は、なんともすがすがしい。

広く深い知識、そしてそこから生じる明確な見識を持った父親と、無知で政治に右往左往する農民が対照的である。やはり、人間には多くの知識が必要なのだろう。それがあって初めて信念に忠実に生きられる。ある作家が書いていたが、「本当の勇気とは、言葉をたくさん知っている人間が持てる」と言う言葉を実感する。

共産主義は左翼の一形態だが、人間をひとつの思想で統一しようとする点では極右も左翼も同じ。共産主義は建前はすばらしいが、この本によれば、毛沢東もわりと贅沢な暮らしをしていたようだ。そこには、上の階級のものが庶民から搾取すると言う構造があり、それは資本主義と変わらない。

また、この本からは、人間をひとつの思想で縛ることの恐ろしさが分かる。そういう集団は、たやすく支配者の意のままに操られてしまうのである。思想・人格・生き方など、人間の多様性を受け入れてこそ真の人間らしい社会になるのだ…としみじみ思った。

毛沢東思想とは ★★★★☆
 今までよくわからなかった毛沢東の思想や文化大革命のはじまりが、体験した者のするどい観点で大変によくわかる。中国という国のベールの内側がよく描かれた作品。
ボン*のオススメ ★★★★★
上・中・下三巻まとめていっきに読めます!
OWARI-BOOKS ★★★☆☆
あの文化大革命の記憶はまだ新しい!
激動の時代に生きた女性の息をつかせぬ物語りです。
ショップねこ吉 ★★★★☆
「文化大革命」の頃のことを書いた小説です。高校の頃に世界史で習っているはずなのですが、「殷」「周」あたりは、気合いを入れていたようですが、それ以後・・だんだんと・・「文化大革命」の頃にはどうやら寝ていたようで・・言葉すら全く記憶になく、この小説を読んで、ひどく衝撃を受けました。
ブックスとも ★★★★★
何度も涙を流しながら読みました。
★主婦のための本屋さん★ ★★★★★
この巻は文化大革命の頃の話で、著者の一家も国民党との関係で母親に嫌疑がかけられ、想像を絶する迫害を受ける事になり、ついに父親が逮捕されます。私がのほほんとした毎日を過ごしていた1960年代にお隣の国中国はこういう時代だったんだなぁ・・・としみじみ考えさせられました。