著者の父親は、文化大革命の時に、反逆者として訊問を受ける。しかし、それに屈しない父親の態度には感服させられる。たとえ精神病になっても、あくまで自分の信念を貫こうとする態度は、なんともすがすがしい。
広く深い知識、そしてそこから生じる明確な見識を持った父親と、無知で政治に右往左往する農民が対照的である。やはり、人間には多くの知識が必要なのだろう。それがあって初めて信念に忠実に生きられる。ある作家が書いていたが、「本当の勇気とは、言葉をたくさん知っている人間が持てる」と言う言葉を実感する。
共産主義は左翼の一形態だが、人間をひとつの思想で統一しようとする点では極右も左翼も同じ。共産主義は建前はすばらしいが、この本によれば、毛沢東もわりと贅沢な暮らしをしていたようだ。そこには、上の階級のものが庶民から搾取すると言う構造があり、それは資本主義と変わらない。
また、この本からは、人間をひとつの思想で縛ることの恐ろしさが分かる。そういう集団は、たやすく支配者の意のままに操られてしまうのである。思想・人格・生き方など、人間の多様性を受け入れてこそ真の人間らしい社会になるのだ…としみじみ思った。