現場の匂い、温度を感じさせる本。
★★★★★
『僕の大好きな自閉症』というタイトルですが、「自閉症」という日本語はほとんど出てきません。
ウィキペディアに書いてあるような小難しい説明も一切ありません。
それでも、“自閉症”と言われる人と付き合った経験がある人であれば、
「そうだよね」「やっぱりな」と思わず頷いてしまう出来事で綴られています。
「多動」「TEACCH」「認知障害」「偏食」「行動障害」等、日常生活では聞き慣れない日本語も出てきますが、
字面から意味を推測するのではなく、思い込みを捨てて読んでいくと、
もしかしたら他人事では済まされないようなドキッとする内容も潜んでいるはずです。
この本を手にし、読み進めていくうちに、「えっ、僕も」「あっ、私も」と共感し、
自分にも思い当たると感じる人が、多くいるのではないかと思います。
このレビューを読んだあなたの周りにも、
きっと本に書かれているような事で苦労し、悩み、懸命に頑張っている人がいるはずです。
そういう人を応援する為に必要なヒントが、この本の中には散りばめられていると思います。
ひとりの人間として
★★★★★
障害をもった子どもたちや、青年たちのことが、包み隠さず、真実が書かれている。彼らを特別な目でみていない、本当のことである。
1章から5章の信夫氏の部分は、2度、3度読み直す度にアジのある日本語が並ぶ。彼らとどう向き合うべきか、職員としてどうあるべきかという姿勢について考えさせられる内容となっている。信夫氏の視点から書かれた日本語は、読むたびに目から鱗である。
6章の厚子氏の書かれた部分は、子どもとの近い距離でのやりとりからの視点が、余すことなく書かれている。明日からの現場でもきっと生きる内容となっている。
障害をもった彼らではなく、ひとりの人間としての付き合いを考えさせられる一冊だ。
本の最後にある語録集もまた、読んでおきたい。