200ページ余りの著作にこれだけの語彙を盛り込んだ冒険心は評価できるが,解説がお粗末に過ぎる。この手の王道はやはり辞書の熟読だが,日本で刊行されている辞書との相互対照の努力が見られない。たとえば,中学生で学ぶ「百聞は一見に如かず」の定訳は「Seeing is believing./To see is to believe.」であり,「One picture is worth a thousand words.」を挙げるのなら,英語圏ではこっちの方が一般的だとかなんとか,それなりに注釈をつけるべきだろう。残念ながら,日米会話学院やバベル翻訳外語学院での「豊富な教授経験を活かし」(表紙見返しの著者紹介)きれてない。「deregulation」も,定訳は「規制撤廃[解除],自由化」の方が適切。「規制緩和」は,「公的資金」に並ぶ官僚翻訳の典型例ではないか!? 500円返せとは言わない。最後まで読んで感じた損した気分と時間を贖ってください。
この手の本は間違いがあってはいけないのです。ところが中身をよく見ていきますと誤りが色々出てきます。どこのどれがおかしいかというような類の記述はストーリーを教えるようなことで、本欄では禁じられていますので明かしません。 敢えて出版社を支援するなら、この本を買って間違いをいくつ見つけられるか、とても面白いですよ、としておきましょう。もし改訂版が出版されれば五つ星になれると思います。