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実存からの冒険 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,050
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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分かりやすいニーチェ、おすすめ ★★★★★
簡潔に簡単にニーチェを知るには、この本の第一章を読むのがが良い。

例えば畜群本能についての解説では
『仲間に対する同情・肝要・誠実』が人間の本能の中にあるという。
「そうよね」「まあいいじゃないか」「がんばったよ」(これは僕の補足)などがこれに当たる。
集団生活社会生活に絶対必要と思われるこれらを、
ニーチェは『畜群本能』と呼んでまるごとまとめて否定するのである。

「嫌われるのが怖い奴はダメ」ということである。

他に、ハイデガー、フッサールも、欲張らず一面を捉えた論考で分かりやすい
実存への導入として ★★★★★
実存主義についての手がかりを求めて手にとってみた。

もはやポストモダン批判自体、時代がかって見えてしまう昨今である。だが、そこでニーチェやハイデガーをはじめとした哲学者を踏まえて著者が論じようとしていることは、さほど古びていないように思われる。というより、それらは依然として「問題」なのであり、現代は否定しがたく依然として近代であることを、その事実は示しているのではないかと思われる。

解説の川本氏が述べるように、フッサール・ハイデガーを論じた第2章よりも、ニーチェを論じた第1章のほうが、人間ニーチェに迫る読み込みがあって圧倒的に面白い。第2章では、著者はハイデガーの死に関する議論に反論しているのだが、そのくだりの説得力は今ひとつ見劣りがする。

なお、著者が竹田青嗣氏から多大な影響を受けているのは確かであるが、どこまで行っても竹田青嗣と西研は別の人間である。つまり、一方を読んでもう一方を読む代わりにすることはできないのであって、この本から竹田氏にはない西氏オリジナルな部分を読み込めるかどうかは、基本的に読み手の側にかかっている問題だと思われる。
もはや存在感に乏しい本 ★★★☆☆
 西氏の哲学に対する姿勢、考え方は、ご本人も認めておられる通り、竹田青嗣氏のそれにそっくりである。そして、残念ながら、文章のわかりやすさ、おもしろさという点では、西氏は竹田氏にはかなわない。
 よって、本書の価値は認めるとしても、竹田氏の「自分を知るための哲学入門」「現代思想の冒険」が同じちくま学芸文庫に入っている今、そちらを読むのが正解であろう。そして、きっと著者の西氏自身もこの結論には納得されるのではないか。
いきるための哲学 ★★★★★
 自分のためにも、そして自分を含む多くの人たちのためにも、もっとも幸せで創造的な人生をおくりたいと少しでも考えているなら、ルサンチマン(遺恨意識)を捨てた方がよい!という筆者の明快なメッセージは、私たちを真の(?)哲学的思考へと導くのに十分なものだ。

「神とか社会的なステータスとか金とかいうような外的な価値から自分を計るような生き方にたいして、そうでない生き方を提出してみせることだった」

「ウラミの念で身体をいっぱいにしてしまったり元気がなくなってショボクレてしまったりしないで、そのつど自分として一番納得できる生き方をしようとすること。」

 キリスト教的道徳批判としてニーチェを読み解きながら、わたしたちが日常る上でも手がかりとなるような思考形態を提出している。後半のハイデガーに関する部分は少し模式的になりすぎて、途中から失速した感は否めないが、それでも可能な限り平易にかかれた本文は、非常に親しみやすい。

私も実生活のなかで共感する部分がおおいにある。

 どの職場にも、仲間や上司の悪口ばかり言っているショボイ人はいるものだ。確かに、人間的にも能力的にも問題がある仲間や上司について愚痴をこぼしたくなるのは分かる。だが、そんな組織でどれだけ創造的な活動ができるのかを模索するのも職務のウチ(というより、それがモラル)なのだから、そんなくだらないルサンチマンは捨ててしまうに限るのだろう。社会人一年生の私は、そんなショボイ先輩や上司をみるたび、とても残念な気持ちになるのだった。
 最近、「社会は甘くない」という言葉の真意が掴めた気がする。そう、こんな気持ちわるい、ネガティブな人たちがいっぱいいるところなのだから、社会は厳しいところだ。

冒険という言葉にはワクワクします! ★★★★☆
哲学書に手をのばすきっかけは何だろう?個人的にはいろいろあるだろう。でも最もおおいのは、知識欲からよりも、自分が何かについて考えること、あるいは、現実生活のなかで日常に浮かびあがった体験、他者との交わりにおいて発生した疑問、もしくは煩悶から、考えることを独自に追求した先人たちの知恵を拝借して、自分のなかにいったん吸収し、さらに深化させたい、そして今ある壁をどうにかクリアーしたいという切実な欲求からではないのだろうか?

かくいうわたしもその1人で、以前、訳本で読んだ哲学者を思い出しつつ、この、西さんの改めてその哲学者達の思想に焦点をあてた、彼なりに解釈した考えを平易な文体で表現することで、哲学に対しての構えを取り除き、みんな感じた事のあるシンプルな思いを哲学的(!)に知らせてくれる希少な本です。

思いに「かたち」を与えることー彼は本文に入る前の自己紹介的な文でこの本のもっている特徴を親切にもあきらかにしてくれている。
ニーチェ、ハイデガーの哲学を一定の距離を持って、もちあげる要素がなく的確にひも解き、導き、批評する姿勢。ポスト・モダン思想に対する明晰な批判。

個人的にはロックバンド経験という共通項があるのを知ったことは、安易ながらも、この著者への更なる共感にもつながった。

出口なし、とこの世の中の閉塞感に苛まれやすい人も、漠然としている直観をもっとすっきりさせて明日につなげたい人も、絶えず模索して生きる喜びを分かち合いたい人には特に、老若男女問わず、読んでほしいと思う本です。