個人的に魚喃キリコの漫画の好きな部分というのは
ナチュラルな絵と共に進む物語が
淡々と程よいリアルさと軽い非日常さを持ちあわせ、
そっと描かれている日常の風景が存在しているところだ。
恋や愛がいかに脆く儚く、美しくあるいはきたなく、
そして深く、どうやっても測りしれないものなのかということを
この『短編集』は生ぬるい温度をもってあたしに伝えてくれた。
魚喃キリコの漫画を読んでいると、
不思議と恋がしたくなったり、反対にしたくなくなったりするのだ。
そしてこみあげてくる小さな笑いや幸福と言う名前の感情も、
胸の奥のほうがジワジワとえぐれていくような気持ちも生まれる。
読むたびにあたしの奥底に沈んでいる重たい塊を
ゆっくりとやわらかくしてくれる作品たちだなぁ、と思った。