インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

又蔵の火 (文春文庫)

価格: ¥570
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
Amazon.co.jpで確認
この小説は暗い。重い。 故に読む者に迫るものがある ★★★★☆
表題作『又蔵の火』は、兄の仇を打つ話である。
この仇討ちには全く理がない。何やらほのめかされることがあるが、それだけで
読者は読み取ることができない。理があるとすればただ一つ、
斬られた兄は弟以外誰からも悲しまれずに死んだということだけだ。
その思いだけを胸にもやし弟は仇討ちに向かう。

故に、この小説は暗い。重い。
だが故に読む者に迫るものがある。
情念のほとばしる初期の傑作 ★★★★★
「又蔵の火」は、著者が「暗殺の年輪」ではなく、こちらで直木賞を
もらいたかったと言っていた初期の傑作。
 明るく突き抜けて、良い意味で、一種大衆小説化した中・後期に比
べて、情念のほとばしるような中身の濃い傑作で、むしろ純文学に近
く、もっとも好きな作品にあげる読者も多いようだ。
 最初に読んだ時は、又蔵の理不尽さを感じたが、冨士真奈美の洞察
に満ちた書評を読んで、改めて読み直した所、又蔵の兄弟愛に基づく
心情が改めて理解できた。実話だそうだが、斬り合いの場面など作者
の数多い作品の中でもベストではないかと思う。ちょっと重いが、読
んでみると必ず得られるところがあると思う。今でも無縁になってい
ないという二人の墓があるゆかりの寺には、斬り合いの場面の像もあ
るとかで、ぜひ行ってみたいものである。
暗さと非情に満ちた短編集 ★★★★☆
作者の初期の短編集。直木賞受賞前後の作品だが、非情と暗さが漂う短編集となった。

タイトル作「又蔵の火」は中編と言って良い分量で、放蕩の末に脱藩し、挙句の果てには親族に討たれた兄の仇を討とうとする又蔵の姿を冷徹に描く。庄内地方に残存している文献をベースに書いたかと思う程、リアリスティックな描写が胸に迫る。兄の放蕩の理由は一切説明されない。又蔵も兄には批判的なのだが、"兄の一分"を通したいと考えている。そして、兄の死を知った時、又蔵の心に"火"がつくのである。軍鶏の闘いと又蔵の闘争心を重層的に描く場面が唯一の作為的手法と言え、後は記録文学風の写実に徹した描写が非情な運命を浮き彫りにする。「帰郷」は親分の罪を被って故郷を捨て、今では人生も捨てている昔気質の老渡世人の宇之吉がフト起こした里心が起こす人間模様を描いたもの。宇之吉の出奔後に生まれた娘がいて、しかもその娘にかつての仇兄が横恋慕していると言う設定の中、宇之吉の心にも"火"がつく。宇之吉と娘を中心とした陰影に富んだ人物描写と木目細かい自然描写が荒涼とした物語を一段と深い味わいにしている。「賽子無宿」は江戸に舞い戻った情に篤いイカサマ壷振師のドンキホーテ的言動が、現実と乖離している様を非情に描いたもの。しかし、壷振師(=作者)の気合いが空回りし過ぎていて、物語に浸れない。「割れた月」は島帰りの男が、更生の志を持ちながら転落行く様を描いたものだが、余りにも定型通りで頂けない。「恐喝」は恵まれぬ過去を持つヤクザの意外な義理堅さを描いたものだが心に響くものがない。後半三作は主人公もストーリーも代わり映えがしなく、作者の工夫不足は否めない。

後年の硬軟自在の筆運びを知っている身としては、「暗くて硬い」方向に傾き過ぎた感があるが、初期の実直な作風を味わえる短編集。
運命ッ! ★★★★★
運命のいたずらか。
運命を感じさせる重い作品が5編。

「割れた月」、「恐喝」の二作は特に運命を感じさせる作品になっていて、こんなことがッて気にさせられた。

「又蔵の火」は斬り合いがすさまじく、読み応えあり。
日本人にとって「家」とは。 ★★★★★
 夢の中まで侵入し 悩ます 藤沢周平。

 ハチャメチャ(放蕩悦楽)な兄、それをしっかりみていた弟虎蔵。
 「家」をまもるために、兄は座敷牢にいれられた。虎蔵は 兄を救済し、一緒に脱藩し江戸に向かった。
兄は故郷にもどり 復讐戦を開始する。
「家」は すでに 婿養子をとり「家」をまもる体制とととのえていた。家の新しい主は劔の使い手でもあった。
兄は無謀であり非常識。「家」を守るために 新しい主は 兄をとらえ座敷牢に戻そうとした。
しかし、兄は反逆。お互い殺されるかどうか修羅場の世界。兄を殺すことによって 「家」はまもられた。

 虎蔵はちがった。兄の哀しみを怒りを 我が身のこととして受けとめる感性の持ち主。

 兄を殺した者を 殺害するために行動を始める。しかし、養子の主は 「家」をまもるために冷静に対応した。
「始末をつけねばならん。土屋の家の体面を傷つけず、おぬしの意趣も通るような始末をな」
差し違え。
こんな 武家の「家」の存続の問題。詳細に語られている。
なにを 感じるかは 読み手によって異なるだろうが、このうとましい話を知らないで生きている者を私は日本人とは認めたくない。