どこがベスト10位なんだ? というマザー・グース・ミステリー
★★☆☆☆
本書は『フランス白粉の謎』以来(だと思う)のマザー・グース・ミステリーで、クイーン・ファンにより著者ベスト10位に選出されているが、アラが多く「なぜこれが10位?」と首を傾げたくなる。
まず第一に、「さっきエラリーが渡したコルトをポケットから取り出し」という事実に反する記述により読者を欺こうとする、実にアンフェアなことを行っている。
第二に、二番目のコルトでエラリーを殺せないことは犯人自身が一番よく知っているのに、そのコルトでエラリーを撃つのは矛盾している。
ラストのどんでん返しは面白かったが、告白状の入った封筒がコーネリアが死んでいるのが見つかる前に開封された可能性に言及していないのも、推理が雑である。
読者のあごはだらりと下がる(●^o^●)
★★★★★
1943年作品。原題は『There Was an Old Woman』で永く『生者と死者と』という題名だったが新装刊と同時に今の題名に改名した。元の題名よりは内容に合っている気がする(●^o^●)。
1997年6月発行の日本のエラリー・クイーン・ファンクラブの機関誌の投票でクイーンの全長編のランキングが発表されている。それによるとベスト10は、
1.『ギリシャ棺の謎』→2.『Xの悲劇』→3.『エジプト十字架の謎』→4.『オランダ靴の謎』→5.『Yの悲劇』→6.『フランス白粉の謎』→7.『中途の家』→8.『災厄の町』→9.『十日間の不思議』→10.『靴に棲む老婆』の順となっていて本作は第10位にランクインしている。ただ思うのはさすがの会員達も全エラリー・クイーン作品を全員が読破しているとは思い難く、有名どころに票は集中するとも思われ、その中でもランクインした7位→10位の作品はスゴイと言えるだろう。
ミステリー・ファンなら誰でも気がつくことだが、読者の意識の中にヴァン・ダインの傑作『僧正殺人事件』を思い浮かばせることをクイーンは想定済みである(●^o^●)。わざと読者に想定させておいてこの作品を発表してくるところがやっぱりクイーンらしいと思う。何となく演劇仕立てぽくなっていて読み進むほどに感心する警句も溢れている。読者のあごをだらりと下げさせる(クイーンはよくこの表現を使う(●^o^●))文句なしの傑作だ。