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リクルートのナレッジマネジメント―1998~2000年の実験

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日経BP社
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  ナレッジマネジメントとは、日々の営業を行っていく上で個人のなかに蓄積されていく知恵や知識(たとえば、効果的な企画書の書き方やクライアント企業に関する情報など)を、全社的に共有する手段として注目を集めている手法である。とはいえ確立された手法はなく、判断基準もあいまいなのが現状だ。システムの導入と同一視されがちな側面もあり、ナレッジマネジメントの導入が、逆に営業担当者に細々とした作業を強制させるなどの負担を強いることもある。リクルートではシステムをひとまず置き、「経営や事業の優先課題を解決する、うまいやり方」を「ナレッジマネジメント的なもの」と定義している。そして、「コテコテにカスタマイズされた」ナレッジマネジメントを体系化していく様子を、現場の声を織り交ぜながら、ライブ感あふれる筆致でたどったのが本書だ。2時間もあれば読み切れるが、内容は濃い。リクルートの企業文化と、ナレッジマネジメントの一例がよくわかる。

「営業がよろこぶことをしよう」という社員サイドの声が、この物語の始まりである。しかし、現場の声を地道に拾い「よろこぶこと」を探そうとした担当者にとっては、「地獄の日々」の始まりでもあった。本書では、「よろこぶこと」の実現手段がナレッジマネジメントと呼ばれる考え方と似ていることを自ら確認し、システムを稼働させるまでの過程が、まるで実況中継のように小気味よいテンポで描かれている。またカットオーバー後に行った数々のデモンストレーションやプッシュメールなど、リアルとシステムの両面から現場を刺激し続ける努力が涙ぐましい。一見スマートに見えるナレッジマネジメントの導入の裏には、陣頭指揮に立つ人物の泥臭い努力があるのだということが改めて痛感させられる。

  本書には、社外のコンサルタントによって指摘されたリクルートのシステムの弱点もそのまま掲載されている。ナレッジマネジメントの実際を知りたい人に、おすすめできる書である。