出版社営業×同社編集
仕事に関しては鋭く敏いが、ごく私的な心の機微を察するのは苦手な攻・的場
真面目で柔軟で人当りもいい。基本ポジティブだが、時折思考が暴走する受・花島

いつものコンビニ。いつもの赤飯おにぎり。
いつものように伸ばした手の横から、伸びてきたもうひとつの手・・・
出会いは偶然だけど、いたって平凡な？ありがちな？偶然。
ただ、それだけ。それだけだったはずなのに、再会・・・

コンビニで赤飯おにぎりを譲ってくれた誠実そうなサラリーマンは、
花島の再就職先である出版社のヤリ手営業マンだった。それが的場。
職場での的場はごく"普通"の穏やかで優しそうだと思った初対面時の印象とは違い、
裏が無くハッキリとした性格で、キツい言葉も口にするが、
慣れない仕事に戸惑っている花島を何かと面倒見てくれる頼れる男で、
花島も次第に心を開いていき、やがて恋に変わる。。
的場もまた、花島の素直で真面目な性格を可愛く思い、心を寄せていく。

二人とも同性を好きになったのは初めてで、もどかしい部分が多い。
自然と好きになって、自然とそうなって、自然と身体を重ねる・・という、
いわゆる"普通"だと思われている恋愛が、どれだけ特別でどれだけ危ういものか・・
この小説を読んで"普通"の定義がどこにあるのか、ちょっと考えてしまいました(笑）

同性である葛藤、誤解、嫉妬、小さなすれ違い。。
本当にごくごく当たり前の日常が描かれていて、その中に愛がタップリ溢れてました。

ぶあつい。そして普通の日常、普通の男の恋物語。

凄く劇的なストーリー展開でもないのにちょっぴり切なくて思わず泣いてしまった。

大人の男だから素直に自分の気持ちを言えなくて、捻って伝えたり少ししか言わなかったりするうちにどんどん誤解が生じていって…という連鎖が切なくて、そして面白い。
どっちが悪いわけでもなく、どっちが良いわけでもない。
どっちが完璧なわけでもないし、何かが優れているわけでもない。
極普通の二人。その二人がなんとかお互いの気持ちを確かめあうまでが事細かに書かれています。
自分の日常ともシンクロするような場面もあり、さりげない事象の積み重ねだから、逆に本の世界に引き込まれていきます。

久々にすっごいＢＬ読んだ気分です。これはお勧め。絶対読むべき。
木下けい子さんのイラストも本の内容や雰囲気にぴったりとはまっております。

「普通のひと」の次には「普通の恋」と書き下ろしの「普通のおじさん」が収録されています。
「普通の恋」はヤバイ程良い。がつがつ貪り読んでしまったほど。花島の痛い程辛い気持ちが伝わってくる。

逆に「普通のおじさん」は的場の焦りや可愛い嫉妬や不安が満ち溢れていて、ほんわか気分。
どれも素晴らしい作品。

この押し付けがましくない臨場感あふれる文章がナチュラルで素敵です。

この本を読むと、自分達が『普通』だと思ってる概念が多分、崩れると思う。 それは多分、主人公自体が『普通とは何だ?』と悩むから。
ここでみんなと合わせる日本人の悪い癖がよくわかる。
例えば、流行に流されて、気付けば同じタイプの服に、髪型。
異性や人を好きになるのが普通。
結婚するのが普通。
よくよく考えてみると、合わせる必要すらないし、結婚しなくても同棲で同じ事は出来る。
でも同じだって安心感を獲たいのか、気付けば『同じ・普通』の枠に嵌ろうとしてる自分が居るのだけれども。
正直、ノーマルからバイへの転身?なら、足元の土台が崩壊したにも関わらず、もっと相手への自分の欲情に葛藤しないの?とか、肉欲的な相談や悩みしかない。認めるの早くない?
その前にラブはドコへ?的なモノしかなかったので☆3個にしました。

タイトルどうりまさに普通のサラリーマン同士の恋愛模様でした。最近のBLってたいして男同士という事は気にせず、あっという間に恋愛関係に至ってしまう場合が多いのですが、この小説の主人公達は30過ぎの普通のサラリーマンなので、告白するまでにも男同士という事や世間体などに悩み、告白後も相手の気持ちがわからず、うっとうしいぐらいwグルグル悩みます。
実際、ノンケ同士で恋に落ちたらきっとこういう風に悩むのが当たり前なんですよね。
そういった人間の感情などがとてもリアルで面白かったです。
明るくテンポの良い作品を多く書かれている榎田先生ですが、このようなシッとりした丁寧な心理描写もとても上手に表現される人だったんだなぁと驚きました。
他のBL小説と違い少々ページ数多かったので、購入をためらっていたのですが買ってホントに良かったです。

榎田尤利さんという作家さんは、ウィットにとんだ軽妙な会話の応酬にその筆力が発揮される方だと思うのですが・・・

普通に生きてきた普通の男がなぜか同性に恋愛感情を抱き、｢自分は普通の男だ」と思い込むがゆえに互いに認めることが出来ず・・というお話ですが、
なぜか、生憎、全然切なくも感じず、きゅんとすることもありません。
淡々と日常やおのおのの戸惑いが描写されるのみで、まさに｢フツーのハナシ」。
言葉の足りない大人の男同士、という設定もあってのことだとは思いますが、この作家さんならではの楽しく、でもぐっと来る会話・・というのが全くなく、消化不良感の強い一冊でした。
正直、こういうふうに普通の一こまの情景を紡ぐのでしたら、もっと精緻で綺麗なな日本語を操る作家さんがいらっしゃるとおもうのですよね〜。
何を思われたか、ご自分の作風のよさを殺してしまった作品なのでは・・と、榎田ファンの反発を覚悟しつつ、☆２つ。