最高をめざして
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原書(初版)発行者のノート
ラーマクリシュナ僧団および奉仕団の長スワーミー・ヴィラジャーナンダ師はだいぶん前から、特に彼の大勢の弟子たちのために、霊性の問題に関する彼の考えや経験を心に浮かぶままに書きとめて来られた。彼は数多くの信者の懇請によって、それらが宗派を問わずすべての真理探究者たちの修行の助けになるよう、ベンガル語の一書にまとめて出版なさった。それは一般大衆に非常に喜ばれ、初版は二、三カ月のうちに売り切れて再版を余儀なくされるに至った。彼は更にベンガル人以外の弟子たちからせがまれて、それがインドおよび国外のもっと大勢の人びとにとどくよう、みずから英語に翻訳なさった。この書は、彼のこのような骨折りの結果である。
スワーミーは一七歳という若さで出家し、一八九二年、当時まだボラノゴルにあったラーマクリシュナ僧院に入った。その後の五八年間は、スワーミー・ヴィヴェーカーナンダを始めとするシュリー・ラーマクリシュナの直弟子たちとの交わり、および彼らへの奉仕に、聖典の研究および厳格な霊性の修行に、そしてまた、僧団の高く責任の重い地位に就いてはあらゆる種類の活動に、費やされた。
「スワーミー・ヴィヴェーカーナンダ全集」第一巻から第五巻までと、東西の弟子たちによる「スワーミー・ヴィヴェーカーナンダ伝」全四巻の第一版との、資料収集、編集、および出版について、世は彼に負うところが少くないのである。このたびの労作の中には、熱烈な霊的精進と心魂を傾けての人類への奉仕に明け暮れたこれらの年月の間に得られた、深く多彩な経験の片りんを見ることができる。
大きく難解な形而上(けいじじょう)学の問題を論じ解決するということは、本書の内容の目的ではない。ここに述べられている助言の主要な価値は、実践上のヒントと、内に霊的衝動がめざめた結果何らかの形の直接の自覚を渇望しているのだが、世俗の生活のさまざまの障害、誘惑や落とし穴、激流、失敗および失望などと戦って心細く感じたり、さもなければ成功への希望を失ったりしているような人びとに、それらが与えるインスピレイションにある。ここに含まれているもろもろの貴重な教えは、弟子または求道者がしっかりとした頼もしい足どりで人生の最高目標への道を進むのを、大きく助けるであろう。主に初歩の段階で求道者が直面して心を悩ます大小さまざまの疑いや問題の、適切な論議と優れて実際的な解決法もその内容の特色であるが、しかしこの書は同時に、それらの助言の基礎である高い霊性の真理を豊かに蔵している。これらの教えはやさしい会話調で与えられているので、まるで直接話をきいているように新鮮で感動的であり、観点が普遍的であるから、男女、学識の有無、老若、または僧俗を問わず、あらゆる宗派に属するあらゆる人びとに差別なしに受け入れられ、理解されるであろう。これは実に、霊的生活と至高者の自覚を渇望する人びとにとって、欠くことのできない書物である。