有意義
★★★★★
現代生々しい「死」というものは我々の日常から切り離されているが
自分や友人、家族など、我々は必ず向き合わねばならない「死」がある。
しかし日常死を感じない平和な暮らしを送る我々は、いざその様な場面に遭遇したら
「別れ」を受け入れる事ができるだろうか。
「美しく」「清潔」な愛する者が
「醜く」「不潔」な遺体となるのは防ぎようもなく
まして交通事故や殺人事件に巻き込まれた場合、その遺体の姿を見るのが心苦しい事は想像に余りある。
エンバーミングは「遺体衛生保存」の技術である。
さて本著ではエンバーミングの歴史的背景や技術、
さらにエンバーミングに立ち会った遺族や葬儀関係者、日本人エンバーマーの
話が記載され、日本人的価値観、行政、倫理的な問題点にも書かれている良書だ。
語り口も葬儀場のスタッフのような気遣い溢れるものであり、
これほど幅広い内容を含んでおきながら読み易い文体で、中立的観点から書かれて好感が持てる。