この類の映画に求められるもの全てが入っている。
４人で始まったアンタッチャブル、最後は２人になってしまうのも潔くて良い。
大義をやり遂げるには犠牲も避けられない、そんな厳しい世界もあるのだと教えられる。

監督や脚本は言うまでもなく、豪華な出演者達、キレの良い、時にドラマティックな音楽、物語世界に溶け込む素晴らしい衣装、
それら全てがこの映画の世界を完璧なものにしている。どれか一つが欠けてもいけない。まさにバランスの妙だ。

ケヴィン・コスナーが好きで、紙ケースが欲しいばかりにこちらの版を買った私には、若き日の彼がとても輝いて見える。
正義のために燃える役柄ではあるけれど、それが決して暑苦しくないのだ。知的で冷静さを感じさせる役人をうまく演じているからだろう。
彼がこの後、「アメリカの良きヒーロー像」を求められる俳優となったこともうなずける(近年では『守護神』などにそれが見られる)。
まだヴィンセントを演じるには間があるアンディ・ガルシア、大物たちの間で少しも引けをとらない存在感がちゃんとある。
クライマックスの駅のシーン以外はそんなには目立たないが、４人目のアンタッチャブル、確かな技術を持ったガンマンとして場を引き締めている。
デ・ニーロとショーン・コネリーにはもう何も言うまい…素晴らし過ぎて、何を言っても野暮になるからだ。
オーラのある役者とはきっとこういう人達のことを指して言うのだろう。

とりわけ印象に残るのは、カポネを挙げたエリオットが出向を終えて警察署の部屋を空ける時。
机の整理をしながら、マローンの形見であるお守りのメダルの付いた鍵をポケットにしまうエリオット。
しかしストーンとの別れ際、一度は部屋を出かけるものの、ふと踵を返し、その鍵をストーンへと託す。「もらえない」と遠慮する彼に、「警官が持つのだ」と言って。
形見を託されたストーン、エリオットの願いとマローンの遺志を継いできっと良き警官となっていくだろう。マローンの死が活かされる気がして胸が熱くなるシーンだ。
ラストも良い。
オープニングの緊迫感溢れる曲とは違い、一度聴いたら好きになってしまう明るく躍動感のあるメインテーマが流れ、エリオットは家路につく。
その姿は、「警官の心得は毎日生きて家へ帰ること」と話したマローンのレッスンを思い起こさせる。

基本ギャングとの闘いを描いた映画なんだけれども、これはゴッドファーザーにも共通して言えるが、決して「それだけ」ではないのだ。
素晴らしい映画にはやはりこういう「人間の物語」がきちんと描かれているのだなと再確認させられる作品である。

サスペンス、ホラーの奇才デ・パルマ監督による、大スター競演のメジャー・アクション大作。

とにかく有名な『乳母車階段落ち』、駅構内の階段の場面では、得意のスローモーションと、双方にらみ合いの緊張感とカタルシスが見事！
映像作家の側面と演出の手腕がものを言った本作一番の名シーンです。
ここでのアンディ・ガルシアが、シャープでカッコイイ！
今後の彼のキャラクターを決定づける名演技。

映画は、禁酒法時代の、カポネと"アンタッチャブル"の面々の激しい攻防をアクションと、悪との癒着と真の正義、大人の友情、同志の絆を交えて、感動できる娯楽作品として描いている点が見ものです。
信念は強いが物腰は柔らかいコスナー、たたき上げ警官のコネリー、突然切れるカポネの迫力のあるデ・ニーロらの演技も見事です。
そして、全編に流れる巨匠エンニオ・モリコーネの音楽は、流麗で美しくノスタルジー満点。
ラストシーン、コスナーの軽さも、明るく観終わることができて、いいシーンです。

デ・パルマ監督が、スリラーだけでなく、一般の大作映画・ヒット映画も立派に撮れることを証明した一作でした。